大相撲7月場所が7月9日に初日を迎えた。新大関・霧島の誕生で注目を集めていたが、初日から休場。最大の注目は関脇3人が同時に大関獲りの場所になるところだろう。メディアは“トリプル昇進”の可能性があると盛り上がっている。
直前2場所が22勝の大栄翔、21勝の若元春、21勝の豊昇龍がおり、3関脇が21勝以上は史上初めてのことだという。大関昇進の目安となる3場所33勝まで11~12勝で届くという状況だ。ただし、この3人への協会の“期待度”は異なるのだと協会関係者は言う。
「霧島が一歩先んじて大関に昇進したが、ひとり横綱の照ノ富士がいつ引退してもおかしくない状況。興行の目玉となる次の横綱を作っていくことを考えれば、協会にとってはもっと大関が増えてほしい。実際、過去には5大関時代が17回、2012年には6大関時代もあった。6大関になった年には日馬富士が横綱に昇進し、2年後に鶴竜、5年後に稀勢の里が横綱になりました。
そうしたなかでも協会が最も期待しているのは若元春でしょう。本来は弟の若隆景との人気兄弟の同時昇進で話題になってほしかったのでしょうが、弟はヒザのケガで復帰は11月場所になる。兄の若元春は突き押しに加え、左四つからの寄りを武器にしており、立ち合い負けせずに相手を組み止めてから多彩な技を繰り出している。突き押し一辺倒ではないので安定した成績が期待されます」
大栄翔は、大関・貴景勝と同様に突き押しが多いスタイルで、昇進しても不安定な土俵になるのではないかと懸念されているという。
「もう一人の豊昇龍は勝負強さの面では昇進の有力候補と言えるが、気になるのが叔父の元横綱・朝青龍の存在です。場所前にモンゴルに帰国した際も、朝青龍とモンゴル相撲を取るなどして話題となった。朝青龍はしばしば来日しては立浪部屋を訪問し、豊昇龍にアドバイスを送っている。横綱時代のスキャンダルで協会を去った経緯を考えても、朝青龍の露出が増えることにいい顔をしない協会関係者も少なくない。
横綱・照ノ富士、大関・霧島とモンゴル出身力士が上位を占めるなか、豊昇龍まで大関に昇進すれば白鵬、鶴竜、日馬富士のモンゴル出身3横綱がいて優勝を独占していた時代を彷彿とさせる。当時は場所の終盤までに星勘定でリードした力士がそのまま順当に優勝することが多かったので面白みに欠けていたという声は少なくない。そのあたりを考えると、豊昇龍が12勝して33勝を挙げた場合も、先場所の2つの不戦勝を持ち出して、『あと1場所見てみよう』となる可能性もある」(ベテラン記者)