「そもそもデートDVという言葉が一般的になったのは比較的最近です。『いくら恋人同士でも過度な要求は人権侵害』と認識されるようになっていったのは、『me too運動』のような人権意識の高まりの流れに重なる部分があると思います。
小さいうちからデートDVについて教えられることによって、無自覚な加害者を減らすことができるし、被害者も『これはDVなんだ』と気づける。
そもそもいまの日本では恋人関係や夫婦関係を排他的契約関係のように捉えている人が多いのではないでしょうか。たとえば恋人関係の場合は、惹かれ合って自然に一緒になるというよりは、形式的に告白して、答えが YES ならその日から『恋人』となる。その瞬間『あなたは私だけのもの』になってしまうのです。裏切りは許されない。その歪んだ正義感は、赤の他人の不倫を過度に叩く風潮とも通底しているような気がします」
たとえば、欧米などの海外では、おおた氏が指摘する「恋人関係や夫婦関係の排他的契約関係」が引き起こす問題についての教育が進んでいる。フランス・パリでは、2019年に「デートDVチェッカー」が作成され、暴力の定義や性的同意の基準を、緑「良好な関係」、黄色「これは暴力」、赤色「危険な状況」と色のグラデーションで示している。このチェッカーは、現地の中高生に向けて無料配布されていて、フランスのデートDV防止への関心度の高さがうかがえる。
「今回の鶴見の事件でも、相手を束縛する意識の強さからデートDVに走ってしまった可能性があります。束縛や支配は愛ではありません。もし、相手のそういった部分に気づいたら、すぐに逃げるべきです。そういった感覚を、交流範囲や機会が広がる思春期の子どもたちに教えることは重要です」(同前)
同じ過ちを繰り返さないようにしていかなければならない。