女優の寺島しのぶ(50才)が、今秋に歌舞伎座で行われる『十月大歌舞伎』の重要な役柄に抜擢されることがわかった。
「これまで決して破られることのなかった不文律が、まさかこんな形で破られることになるとは、誰も予想しませんでした。それだけ、いまの歌舞伎界が危機を迎えているということなんでしょう」(文化部記者)
市川猿之助容疑者(47才)が母親(享年75)への自殺幇助容疑で逮捕されてから2週間あまり。猿之助は父・市川段四郎さん(享年76)の死に関しても、何らかの容疑での再逮捕が迫るとの見方が強く、今後の裁判では実刑判決が出る可能性もある。
「事件直後は、猿之助さんの代役を市川團子さん(19才)や中村隼人さん(29才)など若い俳優が務めたことが話題になり、一時的に劇場は満席になりました。
しかし、この七月大歌舞伎(歌舞伎座)の昼の部では、市川中車さん(57才)が代役を務めることがメディアでは注目されたものの、チケットの売り上げはいまひとつ。今後、猿之助さんが引っ張ってきた人気一門・澤瀉屋の集客がそこまで見込めないとなると、歌舞伎界も、興行を一手に仕切る松竹も、経営的にかなり厳しくなってくる」(歌舞伎関係者)
猿之助ショックに揺れる歌舞伎界の中で、救世主になるかもしれないのが寺島だ。前出の文化部記者が語る。
「歌舞伎座で行われる『十月大歌舞伎』の重要な役柄に、寺島さんが抜擢されることになったんです。女人禁制の長い歴史を持つ歌舞伎座の舞台に、メインキャストとして大人の女性があがるのは史上初。これは歴史的快挙です」
十月大歌舞伎の寺島が出演する演目は「文七元結」。腕のいい職人だが、酒と博打が大好きな左官の長兵衛とその娘で父思いのお久、訳あって橋から身投げしようとする奉公人の文七などが織りなす人情噺である。メインキャストとして寺島と中村獅童(50才)がタッグを組むという。
「獅童さんが演じる主人公の長兵衛は、寺島さんの父・尾上菊五郎さん(80才)の当たり役で、寺島さんは長兵衛の女房・お兼を演じます。長兵衛との夫婦の掛け合いなど見せ場が多く、かつては中村時蔵などの『立女形』が演じてきた重要な役どころです」(前出・文化部記者)
これまでも先代・藤間紫さん(享年85)など、歌舞伎の舞台に成人女性があがることはあったが、それは新橋演舞場や博多座などに限られた。歌舞伎の「殿堂」である歌舞伎座の本公演で、女性が主役級を張るのは前代未聞の一大事と言っていい。
「そもそも『歌舞伎の檜舞台には女性はあがれない』が梨園の不文律で、過去には松本白鸚さん(80才)の娘の松たか子さん(46才)や、市川團十郎さん(45才)の妹の市川翠扇さん(44才)なども歌舞伎座の舞台に立つことを望みながら、どうしてもその夢が叶いませんでした」(前出・歌舞伎関係者)
変革の背景には梨園に新風を送り込む狙いもあるという。
「猿之助さんの件で歌舞伎界全体が危機的状況を迎え、暗いイメージを刷新する起爆剤として、しのぶさんの名前があがりました。一部には『松たか子さんはどうか』という声もあったそうですが、結局、しのぶさんに白羽の矢が立った」(前出・歌舞伎関係者)
※女性セブン2023年7月27日号