日本の成人の3人に1人が「眠り」の悩みを抱えていると言われる。睡眠薬の処方を受ける人も少なくないが、できれば薬に頼りたくはない。寝苦しさが増すこれからの季節、快眠を導くためにはどうすればよいのか。
『ぐっすり眠る習慣』(アスコム刊)の著者で、睡眠専門医の白濱龍太郎医師(RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長)が、快眠するための生活習慣を解説する。(以下、「 」のコメントは白濱医師)
昼食に辛いものはNG
まず基本的なところでは、朝、昼、晩の食事が「眠りの質」を左右する。
なかでも朝食時の摂取が推奨されるのは、必須アミノ酸の一つであり大豆製品や乳製品、卵、ナッツ類に多く含まれる栄養素・トリプトファンだ。
「トリプトファンは、体内に入ると心のバランスを整える働きを持つホルモン、セロトニンに変わります。日中に体内で分泌されたセロトニンは、夜、酵素の働きにより、睡眠ホルモンであるメラトニンに変化。これにより、自然に眠気が訪れるメカニズムが働きます」
トリプトファンを効率よく摂取するために白濱医師が勧めるのが、「焼き鮭、味噌汁、納豆、白米」からなる典型的な和の朝食メニューだ。
「トリプトファンを脳に運ぶのがインスリン。その分泌を促す白米を合わせて摂ります。また、セロトニンの合成に不可欠なビタミンB6を多く含む鮭、マグロ、カツオといった魚を一緒に食べれば文句なしの朝食です」
一方、昼食で避けたいのが、いわゆる激辛料理だという。猛暑の日ほど、スパイスの効いた料理を食べて汗をかき、刺激で頭をシャキッとできそうな気がするが……。
「激辛料理を昼食に食べると、昼間に深部体温を過剰に上げた反動で、午後の眠気が過剰になったり、体内時計調整が上手くいかなくなることで、夜眠れなくなる恐れがあります」
夏本番を迎え、好きな人にはビールがより美味しく感じられる時期だが、飲酒の時間にも要注意だ。
「そもそも、寝る前に水分を摂りすぎるのは、入眠後にトイレが近くなるのでNG。アルコール、なかでもビールは利尿作用が強いうえ、睡眠中のアルコール分解は交感神経優位となり、身体も脳も休息しにくくなります。飲酒は就寝3時間前までに適量にとどめましょう」