“ソロ活”という言葉も定着し、ひとり旅をしたいと考える人も増えている。しかし、「もう若くないし、この年になって楽しめるかしら」と不安になる人も多いのではないだろうか。そこで、達人にひとり旅の極意を聞く。
今年3月の発売以来、7万部を超えるベストセラーなっている『50歳からのごきげんひとり旅』(大和書房)。 同世代から「読んでいて楽しかった!」「私もひとり旅に出たくなった」と、多くの共感を得ている著者の山脇りこさんは、若かりし頃はひとりでニューヨークやタイなど、あちこち出かけていたという。
しかし結婚後は、同じく旅好きの夫や家族との旅が主流になっていた。
そんな彼女が49才のときに誘われて、単独で台湾通のグループ旅に参加したときのこと……。
「ひとりでホテルに帰ることになった際、同行者から『ひとりで大丈夫?』と真顔で心配され、知らぬ間に“頼りない人”と見られていた自分にがく然としました。
さらに、50代に入って心身の不調が一気に押し寄せてきたんです。何を着ても似合わないし、しわやたるみが増え、体力もなくなる……。鬱々とした気分を上げようと、素敵な洋服を試着したり、苦手なのに、知らない人との食事会にも参加して社交に努めたり……。ポジティブになれる本を読んだこともありましたが、できない自分にいっそう落ち込んでしまったんです」(山脇さん・以下同)
そうした経験を経て、改めて考えた山脇さんは、ひとつの答えにたどり着く。
「それは、もう自分を変えるために何かを学ぶとか、何かを身につけようとするのはやめて、本当に楽しいと思えることだけをやろうということでした。老後に思い出しても楽しくなれる“ご機嫌玉”を貯蓄しようと決めたんです」
ご機嫌玉が貯まるもの。そのひとつが、旅だった。
大人のひとり旅に冒険はいらない
約20年ぶりとなるひとり旅の先に選んだのは、京都。
「実家の長崎から東京の自宅に帰る途中で立ち寄った、1泊の旅でした。京都は、夫や家族と何度も行っているところだし、友人も住んでいるので、何かあれば誘える(笑い)。
私はとにかく“ひとり下手”で、ひとりご飯はもとより、カフェに入るのも苦手。その夜も、お目当ての店のまわりを3〜4回行ったり来たりしたものの結局入れず、好きなお寿司屋さんの鯖寿司を買ってホテルの部屋で食べ、さっさと寝てしまいました(笑い)」
翌朝、山脇さんは、夫との旅でいつもしている“朝ラン”を、ひとりでも実行した。