何が大きな変化が日本に現れると、原因として大きな声では語られることがないが、少なくない人が指摘する現象がある。たとえば、訪日外国人観光客が増加し、日本の人々が様々な形で世界の人たちと交流しているために起きているのではないかと思われることがあっても、それがマイナスの現象だと口に出して言いづらい雰囲気が今は強い。ライターの宮添優氏が、不平不満を大声で言うことを憚りつつも、歓迎できないことが現実に起きている周辺で不安な気持ちを抱える人たちに聞いた。
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全国で梅毒患者が急増している。東京都では2022年の1.5倍ペース、女性だけに限れば梅毒の発生報告数は10年前と比較して40倍ほどに膨れ上がっているという。増加傾向は東京だけではなく、全国的な現象だ。
厚生労働省が発表している全国調査のデータを見ると、日本での感染者数は1967年の1万1000人をピークに長らく減少傾向にあり、2012年までは1000人を超えることがなかった。ところが、2013年に1228人を記録すると急増に転じ、2022年は1万2千964人と過去最多を記録した。年代別にみると、男性は20~50代、女性は20代の報告数が突出している。
公式な発表はないけれど……
「出会い系サイトやマッチングアプリの利用拡大が背景とも言われていますが、きっかけはインバウンドだと思いますよ。公式にはそのような発表はなされていませんが……」
こう話すのは、九州在住の検査機関スタッフ・西岡知之さん(仮名・40代)。2010年代前半から、梅毒を始めとした性病検査に従事しているというが、梅毒をめぐる状況が明らかに変わったのは、やはり資料通り「2015年前後」であったと断言する。そのころ、一体何があったのか。
「アジアからのインバウンド客の急増を受けて、福岡や熊本などの性風俗店では、それまでお断りだった外国人にも門戸を開放したんです。感染ルートがはっきりわかっているわけではないものの、肌感覚としては、これが原因だったとしか考えられません」(西岡さん)
元々梅毒は、感染すると男性の方が痛みや違和感など、自覚症状が出やすいとされる。したがって統計の報告数のうち男性が多い傾向にあったが、男女ともにある時期から急増しているのは、やはり外的要因ではないかと指摘する。