テレビ朝日の最終試験では、1週間見ているテレビ番組を暗唱
秋山は入社8年目。もうその頃にはテレビは斜陽産業などとも言われていたが、テレビ局に入ってバラエティ番組を制作することしか考えていなかったという。
「僕は死ぬほどテレビっ子で、受験の時期もほとんど勉強せずテレビばかり見てました。テレビ朝日の最終試験でも、1週間見てるテレビ番組を暗記して全部言ったんです。たぶんその量がいいねってなって入れてくれたんだと思います。その見ている番組が一番多かったのがテレビ朝日で、だからテレビ朝日が第一志望でした。
『めちゃイケ』『アメトーーク』『怒り新党』…朝から晩までテレビを見てて、特に『世界は言葉でできている』はかじりつくように見てました。高校の頃からテレビの人になりますって言ってたので斜陽だみたいなことはまったく考えなかったですね」
秋山は『ミュージックステーション』や『くりぃむクイズ ミラクル9』などのADを経て、『マツコ&有吉 かりそめ天国』でディレクターデビューを果たし、現在もチーフディレクターとして番組を支えている。
「有吉さんとマツコさんがつまんないと思うことは絶対にやりたくないっていうのがあるので、自然と2人の笑うポイントに染まってきている気はします。それを具体的な言葉にするのは難しいんですけど、誰もが面白いと思うことじゃない気がするんですよね。オカリナさんが勝手にお店の商品を開ける姿に笑うとか、アルコ&ピース・平子(祐希)さんと仁支川峰子さんのケンカで笑うとか、やっぱ1個ズレた、メインじゃないような笑いを目指している感じはあります」
藤井智久から自分なりに学んだことは「ダサいことをするな」
この番組で『虎の門』や『くりぃむ』シリーズ、『マツコ&有吉の怒り新党』などを作りテレビ朝日のバラエティを牽引してきた藤井智久の薫陶を受けた。
「僕がディレクターになった頃は、まだ現場にいらして、VTRを見てくれました。毎週胃が痛かったですけど(笑)。僕が藤井さんに勝手に学んだのは『ダサいことをするな』ってことです。
たとえば、VTRを見て有吉さんとマツコさんが『へぇ』と言う数を競う『へぇダービー』という企画で、尺が足りなくなったから、面白かったけどサブ出し(番組収録時に出演者が見る映像)ではカットしたところを後から増やしたんですよ。
有吉さんもマツコさんもその部分は見てないのでウソになるからワイプは抜いたんですけど、藤井さんにめっちゃ怒られて。ワイプは抜いているにせよ、こういう立て付けのVTRで2人が見ていない部分を流すのは不誠実じゃないかって。なによりダサくないかと。確かにその通りだなと思いました。
考えてみたら藤井さんの番組ってダサいことをやってないなって。だから僕も、演者さんに対しても、視聴者の方に対しても、あの番組ダセぇなって思われることだけは絶対にしないでおこうっていうのを一番大事にしています」
ちなみに『がんばれ地上波』でナレーションに虹の黄昏・野沢ダイブ禁止を起用したのも実は藤井の影響だという。
「これまで藤井さんが手がけた番組って、タレントさんをナレーションに起用していることが多くて、それを僕は勝手に継承しています。『ぼる塾のいいじゃないキッチン』では蛙亭の中野さん、『おグッズ』でもダンビラムーチョの大原(優一)さんにお願いしましたし。MCに近しい人で、声が特徴的な人という基準です。『がんばれ地上波』では、野沢さんの大声で叫ぶ感じが聞いてて気持ちいいからぴったりだろうなってことでお願いしました」