破天荒な芸風としてのパブリックイメージを持つお笑いコンビ・ランジャタイの冠バラエティ『ランジャタイのがんばれ地上波!』では、伊藤幸司、国崎和也がその破天荒さをも破壊するような柔軟な立ち回りで番組を盛り上げている。
『ランジャタイのがんばれ地上波!』企画・演出の秋山直氏は、国崎を「たぶん全部できるから、全部やらない」人と評し、伊藤を「内に秘めたものがスゴい」人(前編参照)と語る。『がんばれ地上波』は「地下ライブ」の空気を色濃く感じる稀有な番組だが、実は秋山は『マツコ&有吉 かりそめ天国』ではチーフディレクターも担当している。
聞き手は、『1989年のテレビっ子』『芸能界誕生』などの著書があるてれびのスキマ氏。テレビ番組の制作者にインタビューを行なうシリーズの第8回【前後編の後編。前編から読む。文中一部敬称略】。
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ランジャタイ・国崎は「たぶん全部できるから、全部やらない」
番組演出の秋山直がこれまで手掛けてきた『ぼる塾のいいじゃないキッチン』では料理、『もう中学生のおグッズ!』ではタレントグッズと、番組のコンセプトとして一応の縛りがあった。だが『ランジャタイのがんばれ地上波!』にはそれがない。
「やっぱりやっていて苦しくなる部分が正直あったというのがひとつ。あとそもそもランジャタイさんの場合、絶対に縛りがない方がいいと思ったんです。国崎さんと伊藤さんと僕の発想で、毎回自由に違うことをやれる番組のほうが、ランジャタイさんの間口も広がるし、魅力が一番伝わるんじゃないかと思って、なんでもありの番組にしました」
ランジャタイは「狂気じみたボケの国崎をツッコミの伊藤が黙認するナンセンスな芸風」(『さんまのお笑い向上委員会』2022年6月11日)などと評されることが多い。『がんばれ地上波』でもその芸風が基本的には踏襲されつつも、伊藤がボケに回ることも多く、新しい一面ものぞかせている。
「最初はいつものように国崎さんがボケで、伊藤さんが進行だったんですけど、やっていく中で、これはダブルボケでいいなと思ったんですよね。だから例えば、国崎さん、伊藤さんがダブルボケで、FUJIWARA・藤本(敏史)さんがツッコむみたいな形をベースに考えてます。あとは『ブチギレ王』みたいに2人が楽しむだけっていう回もありますけどね(笑)。最初のように伊藤さんが進行のときもありますし、そこは企画によって一番いい形を考えています」
そうした企画の中で目立つのは、国崎の万能性だ。やりたい放題ボケまくっているように見えて、実は共演者を最大限活かし、その魅力を巧みに引き出している。
「聞いてほしい時に聞いて欲しい人に話を振ってくれるんですよね。僕が出そうとしていたカンペを先に言ってくれる。アイドルの子があまり喋れていないタイミングで、振ってもらおうと思ってカンペを出そうとしたら『今の対決どうだった?』みたいに先に気づいて聞いてくれる。やっぱり俯瞰で見てるんでしょうね。だからたまに他の番組の会議とかでランジャタイは壊すからダメだみたいになると違うのにって思いますね。壊さないほうがいいときは壊さないですから。
破天荒な感じはしますけど、たぶん全部できるんですよね。全部できるからやらない。何も分からなかったら面白くない壊し方になると思うんですけど、基礎があるからどう壊したら面白くなるかわかっている。だからきっと普通に食レポとか街ブラロケもできると思うんですけど、それをあえてやらないのがカッコいい芸人さんだなと思います」