ブラジャーやパッドで形作られていた胸の膨らみが、最近では谷間が見てわかるほどに。肉体の変化は、自分らしくいるために重要だった。半面、その変化は心無い言葉にも凜と立ち向かっていた強い心に、綻びをもたらしたのかもしれない。7月12日、ryuchellさん(りゅうちぇる・享年27)がこの世を去った。10年来の友人が無念さをにじませる。
「一部で報道されているようにネット上での誹謗中傷が無関係だと思えません。昨年から、見るに堪えないひどい言葉があふれていました。ただ、彼は芯が強い人だったし、そうした悪口にもこれまでは向き合えていました。その強さは誰にも真似できるものじゃありません。本当に尊敬できる人でした。でもここ数か月はいくつもの出来事が重なってしまって……不安定な精神状態だったんです」
ryuchellさんは生前、「自分らしく生きること」を積極的に発信していた。自分らしく生き始めた矢先、彼の身に何が起きていたのか──。
ryuchellさんの生涯は波瀾万丈だった。1995年に5人きょうだいの末っ子として沖縄県で生まれ、幼少期からお人形遊びやかわいいものが好きで、同世代の男子とは違うことを自覚していたという。高校卒業後に上京すると、原宿のショップ店員として働き、読者モデルとしても活動した。すでにカリスマモデルとして活躍していたpeco(ぺこ・28才)と2014年に出会い交際を始めると、人生が大きく動きだした。
「2015年にpecoの彼氏としてバラエティー番組に出演し、個性的なファッションやハイテンションのキャラがウケて大ブレークしました。“ジェンダーレス男子”として注目され、テレビで見ない日はないほどでした」(芸能関係者)
2016年12月、21才のときにpecoと結婚。2018年7月に男児が誕生し、23才で父親となった。順風満帆だと思われていた矢先の2022年8月、突然離婚を発表した。理由はryuchellさんのカミングアウトだった。
「彼はSNSで離婚を報告する際、《“夫”であることには、つらさを感じてしまうようになりました》と告白しました。以前から自身の性自認に違和感を抱いていて、男性として生きることに葛藤を抱いていたようです。pecoさんとの話し合いの末、離婚したうえで人生のパートナーとして同居を続けながら、子供を育てていくことを発表しました」(前出・芸能関係者)
離婚後、ryuchellさんは自分を解放した。メイクやファッションが大きく変わり、外見は女性らしくなっていった。ネット上での誹謗中傷が目立つようになったのは、この頃からだ。ryuchellさんの変化を嘲笑したり、「身勝手」「育児放棄」などのバッシングが相次ぐようになったのだ。
それでもryuchellさんは、心の声に正直に、今年に入ってからは「自分らしさ」をさらに追い求めるようになっていった──。前出の友人は今年2月、ryuchellさんの胸の内を耳にしていた。
「彼は“女性ホルモンの投与”に興味を持っていました。心だけではなく、体も女性になりたいという気持ちが強くなっていたようです。前向きな話をしていましたが、同時に副作用の不安も口にしていました」
女性ホルモンの投与は、男性の心身にどのような影響を及ぼすのか。銀座アテナクリニックの総院長・定村浩司さんが解説する。
「男性が女性ホルモンの投与を始めると、バストが徐々に膨らんでいき、ヒゲや体毛も薄くなっていきます。体の変化に限らず、メンタルにも影響を及ぼします。
女性は生理周期があるため、血中のホルモン濃度の変動に慣れているのですが、男性はその変動をほとんど経験することなく生きています。そのため、男性に女性ホルモンを投与すると、経験したことのないホルモンバランスの変化でメンタルの調子が崩れることがあるんです。実際、うつ症状が出た事例などが報告されています。特に投与開始から2~3か月の初期は、体の変化が大きい一方、メンタルも崩しやすくなるのです」
一部報道では、ryuchellさんは今年4月頃から女性ホルモンを投与し始めたとされている。冒頭のように体の変化は大きかったようで、5月18日に自身のツイッターに投稿した写真には、しっかりと胸の谷間が映っていた。