コレステロールを減らすと更年期リスクが上がる
女性は閉経後にコレステロール値が上がりやすい。LDLコレステロール値が140mg/dl以上あると脂質異常症の一種である高LDLコレステロール血症と診断されるが、高血圧と同様に数値に踊らされる必要はない。
「脂質異常症の数値が少し高い程度では、治療しないという選択をすることが最近の医療の傾向です。コレステロールは女性ホルモンの材料でもあり、無理に減らすと更年期障害や肌荒れなどが生じる恐れがあります」(長澤さん)
しかし高齢の医師などはいまだに基準値を超えると薬を処方するケースも少なくないと長澤さんは続ける。代表的な治療薬は「スタチン」だが、注意が必要だ。
「スタチンには筋肉が溶ける副作用があり、最悪の場合は溶けた物質が腎臓にたまって腎不全を発症して、人工透析が必要になることも。安易な服用はトラブルのもとです」(長澤さん)
そもそもコレステロール値を下げる理由は、数値が上がることで動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高まるためだとされる。だが、喫煙習慣や糖尿病などの持病を持つ人が少ない日本の女性は、男性や欧米人に比べてリスクが低い。それどころか、日本人を追跡した多くの研究でも、女性はコレステロール値が高い方が、死亡率が低いとの結果が出ている。
スタチンと同様に血液中の中性脂肪が基準値を超えた際に出される薬にも気をつけたい。
「処方される薬の多くは血液をサラサラにする作用があり、出血を起こしやすくなります。そもそも中性脂肪だけが高くて病気になる人はほぼいない。実際に薬をのんだ人とのんでない人を追跡調査すると、のんだ人の寿命の方が短いとのデータもあるのです。だから私は中性脂肪だけが高い人の治療は薬を使わず、生活指導で改善をめざします」(岡田さん)
ただし、その生活指導にも古い常識の落とし穴がある。
「昔から卵や牛乳などの乳製品がコレステロール値を上げて脂質異常症のリスクを増大させるといわれますが、いまでは乳製品がコレステロール値を上げないことは世界的な常識です」(長澤さん)
さらに最近の研究では、牛乳は高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクを減らすことも明らかになりつつある。最新の知見に則った生活習慣の改善で、なるべく薬を使わずに高血圧や脂質異常症を克服したい。
※女性セブン2023年8月3日号