うだるような暑さが続くこの夏。そんな中でも、皇族方は爽やかな笑顔でお出ましをされています。その爽やかさの源泉はいったい何なのか。皇室ファッションに詳しい青木淳子さんの解説のもと、皇族方の“上品”サマーファッションをひもときます。
【解説はこの人】
歴史文化学研究者青木淳子さん/元大東文化大学特任准教授で、現在は大東文化大学、フェリス女学院大学、実践女子大学、学習院女子大学の非常勤講師を務める。日本フォーマル協会特別講師でもあり、著書に『パリの皇族モダニズム』(KADOKAWA)、『近代皇族妃のファッション』(中央公論新社)がある。
【皇后雅子さま(59才)】
●1998年8月 石川県ご訪問
お若い頃はビビッドな色使いで、かっちりとした雰囲気の服装が多かった雅子さま。
「ローズカラーのようなビビッドな薄い臙脂色のセットアップに、ゴールドのボタンやブローチ、腕時計で華やかさを加えられています。雅子さまの雰囲気にピッタリで、バッグ・手袋・靴の白が、夏らしいコーディネートとなっています」(青木さん・以下同)
少し長めの袖丈で肌を露出しすぎないことも上品さを醸し出す要素のひとつ。
●1993年8月 2か月ぶりの里帰り
「紺に白のパネルが付いたワンピースで、4つの大きなメタルのボタンが音楽のリズムを表すような、凝ったデザインです。白と紺はマリンルックでも見られる、まさに『夏の配色』。パンプスやバッグも白で統一され、すっきりとした装いとなっています」
●2003年8月 那須御用邸ご静養
愛子さまがお生まれになってからは、ふんわりとした柔らかな雰囲気の服装が増えた雅子さま。
「オーバーシャツの袖丈は夏にしては長めな七分袖。隣にいる愛子さまを抱き上げても着崩れしない、安心ママファッションですね。ノーアクセサリーで、牧場の自然の風景ともよくマッチしています。優しいペールトーンのシンプルなファッションから、お子様を包み込むようなお心のあたたかさも伝わってきます」
●1994年8月 群馬県ご訪問
ビビッドな水色のセットアップ。ベルトでウエストマークをされ、ジャケットはスッキリとした印象に。
「サファリジャケットのようなかっちりしたデザインに、真珠のネックレス、イヤリング、ピンブローチ、指輪といったアクセサリーでエレガントさを付加しています。服の水色と小物の白との対比が、夏らしい爽やかさを醸し出しています」。
●2016年8月 「山の日」記念全国大会ご出席
「濃紺のワンピースに、丈の短いボレロタイプの白いジャケット。ジャケットの胸元には花びらを模した飾りが2つ並び、アクセントとなっています。白いイヤリング、濃紺と白のコンビのクラッチバッグとパンプスが、夏らしさを一層引き立てています」
●2018年8月 「全国高等学校野球選手権記念大会」ご出席
近頃の雅子さまは、夏でも七分袖を着用されることが多い。肌を露出しすぎない上品さと、夏らしい爽やかさを兼ね備えた選択だろう。
「こちらはやや短めの七分袖の、白い横縞のスーツです。テーラードカラーの襟の一部、ボタン、バッグ、パンプス、ネックレス、イヤリングに白を使い、夏らしい爽やかなファッションとなっています。スーツの布は濃いグレーの細い織の横線が集まって縞に見えるという、凝った作りの生地だとお見受けします」
●2005年8月 長野県ご静養
オフホワイトのパンツにローズカラーの織柄の縦縞ジャケット。インナーもローズカラーでまとめられ、統一感のあるファッションとなっている。
「アクセサリーは大ぶりのパールのイヤリングだけ、と優しい雰囲気でまとめられています。お隣の愛子さまのピンク色のワンピースともよく調和しています。愛子さまがご使用のレモンイエローのバッグも注目ポイントで、2017年、2019年にもご使用されていたものです。3才でお持ちだったバッグを18才でもお使いになるとは、愛用品を長く大切にされる精神が素晴らしいですね」
●2023年6月 インドネシアご訪問
「白のパンツに白と黒の千鳥格子のジャケットで、インナーは白。クラッチバッグとパンプスも、白と黒のコンビですっきりとまとめられています。さらに、襟やカフス部分の白いパイピング(縁取り)で夏らしさを演出。世界的に古くからの伝統的な千鳥柄を、パンツと合わせてスタイリッシュに着こなされています。いまや雅子さまの定番ともいえる大ぶりのパールのイヤリングと、パールのステーション型ネックレスを合わせ、スマートさと華麗さを兼ね備えたコーディネートに感じられます」