長いコロナ禍を経て、夏の風物詩が戻ってきた。4年ぶりに開催される東京・隅田川花火大会(7月29日)をはじめ、この夏、全国各地で夏祭りや花火大会が開かれている。そこで着たいのは「浴衣」。浴衣も着物も自由なアレンジが進み、セパレート型が登場するなど着やすさが進化する昨今、着物界の新常識となりつつあるのが「帯結ばない帯結び」だ。
「巻いて留めるだけ」で、初心者でも簡単に和装が楽しめ、アレンジも無限大。そんな「帯結ばない帯結び」を考案したのは、大阪で着付け教室を主宰するayaaya(アヤアヤ)さん。2019年に刊行した『帯結ばない帯結び』(TAC出版)が好評を博し、今年6月に『帯結ばない帯結び2』を出版した。元々、洋服が大好きで、ファッション誌を見て育ったというayaayaさんに、今年、浴衣を着たい方へのアドバイス、そして、和装の魅力について伺った。
妊娠中にひらめいた「巻いて留めるだけ」
──自分で浴衣を着たいと思っている人は多いと思いますが、帯は大きな関門です。「帯結ばない帯結び」は、簡単かつキレイで、こんな方法があったのか! と驚きました。ポイントは?
帯を「体に巻き付けて、ぎゅっと締めて、留める」だけです。「家にあるもので完結できる」点が良いところで、留めるのは帯締めでなくても、洋服のベルトでもいいし、靴紐でもいいんです。アレンジで見えなくなるときは、クリップを留めたままでもいい。私は百均などに売っている伸びる靴紐をよく使っています。
本や動画には、浴衣に使う半幅帯をはじめ、名古屋帯、袋帯、兵児帯まで、いろんなアレンジを載せていますが、実はそれは後付けです。巻いて留めたらアレンジもしやすかった! という感じです。難しく考えずに、初心者の方も、まずは体に巻き付けて留めてみてほしい。「帯結ばない帯結び」は、浴衣や着物を楽しむ「超近道」です。
──ありそうでなかった「帯結ばない帯結び」を思いついたきっかけは何でしたか?
4年前、妊婦のときも着付け教室をやっていたんですが、息切れをすることがあったんです。ちょうどそのとき、生徒さんに肩が痛くて上がらない、回らないという方もいました。何かラクな方法はないかなと考えて、巻いて留めるだけをやってみたら、「できてしまった」という感じです。
ただ、「結ばない」という点でいえば、振袖の帯結びは結ばない着方が主流になりつつあるように、新しいものではないんです。昔、おばあちゃんが、帯を巻いてクリップで留めて羽織で隠していた、という話を聞いたこともあります。でも、そうした結ばない帯をオシャレに見せる、ということは誰も思いついていなかったんだと思います。