国内

【警視庁3大未解決事件】柴又・上智大生殺害事件は捜査継続中 当時の担当刑事が漏らした“幻の容疑者”が空振りに終わった理由

事件当日の現場(左)と、昨年公開された警視庁の啓発ポスター(時事通信フォト)

事件当日の現場(左)と、情報提供を呼びかける警視庁のポスター(時事通信フォト)

 殺人罪などの「時効」が撤廃されたことで、事件から長い時間が経過した今も捜査が続く未解決の凶悪事件がある。警視庁管内で「3大未解決事件」の一つに数えられるのが、東京・柴又の住宅街で発生した「上智大生殺害・放火事件」だ。当時、事件を取材した産経新聞社会部記者の大島真生氏が、犯人につながる有力な物証があったにもかかわらず未解決となった背景について、当時の担当刑事らの証言を交えて考察する。

 * * *
「実はホシの尻尾をついにとらえたかもしれないんだよ」。居酒屋でサシ飲み中に警視庁の刑事は少し興奮ぎみに私へそう語りかけた。ホシとは、1996年9月9日午後4時頃、上智大学外国語学部英語学科に通っていた4年生の小林順子さん(当時21歳)が東京・柴又にある2階建ての自宅にいるところを小型の刃物で殺害され、家に放火された事件の犯人を意味した。事件は「警視庁3大重要事件」や「平成日本3大未解決事件」などと呼ばれるものに数えられる。

 実際にはこのホシは外れで、密かに警察内部で盛り上がった“幻の容疑者”の捜査は空振りに終わった。ではなぜ幻は幻のまま消えてしまったのだろうか。事件経過を振り返る。

被害者は米国留学直前に殺害された

 7月30日で発生から28年となる八王子スーパー射殺や、世田谷一家殺害(2000年12月30日発生)とともに毎年“決まりもの”のようにニュースで取り上げられる、この上智大生殺害は警視庁記者クラブに第一報が東京消防庁からの火災の「出火報」としてもたらされたものだった。

 その後、全焼した民家から遺体が発見されたこと、遺体は首を刃物で刺されていたこと、他殺の疑いがあるといった情報が断続的に伝えられ、警視庁側から凶悪事件の捜査を指揮する捜査1課長が急遽現場に向かった事実が告げられると、報道各社の記者たちはタクシーやハイヤーに乗り込み現場へと急いだ。私も同僚から「行こう」と促され、車に飛び乗った。東京・霞が関は小雨が降り出したところだった。

 当時の捜査1課長は寺尾正大氏(一昨年死去)。寺尾氏は捜1でロス疑惑やトリカブト事件の捜査を差配。地下鉄サリンなど一連のオウム真理教事件捜査の手綱を1課長として握った人物だ。この日は現場周辺では、朝から雨が降り続いていたようだった。現着すると少し肌寒かったことを覚えている。

 小林さんは2日後に米国留学を控えていた。防犯カメラの爆発的な普及で殺人事件は多くが早期解決をみるようになり、未解決事件は激減している。小林さん殺害が重要事件として指折られる理由は未解決だからだが、留学直前というピンポイントで被害に遭ったにもかかわらず交友関係から犯人が浮かんでこなかった点にもある。

 犯人は小林さんを殺害した際に握っていた刃物で自分も手を切り、証拠隠滅などのために火をつけて逃走する途上、現場に血痕を残していた。実は放火には、最近はすっかり見かけなくなったマッチが使用されていた。すでに警視庁を定年退官した捜査幹部OBが振り返る。

「1階の靴箱にマッチ箱が投げ込まれているのが現場検証で発見され、マッチ箱の中には血痕が付着していた。これは2階でナイフのような刃物を使って凶行に及んだ後にマッチを使い、マッチ箱を閉じて1階で投げ捨て逃走したことを意味していた。亀有署特別捜査本部は確実に、留学直前というタイミングが犯行動機に結びつくと見立てて血痕のDNA鑑定で犯人が早期逮捕できると考えていた」

関連記事

トピックス

異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(写真は2019年)
《体調不良で「薬コンプリート!」投稿》広末涼子の不審な動きに「服用中のクスリが影響した可能性は…」専門家が解説
NEWSポストセブン
いい意味での“普通さ”が魅力の今田美桜 (C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
朝ドラ『あんぱん』ヒロイン役の今田美桜、母校の校長が明かした「オーラなき中学時代」 同郷の橋本環奈、浜崎あゆみ、酒井法子と異なる“普通さ”
週刊ポスト
現役時代とは大違いの状況に(左から元鶴竜、元白鵬/時事通信フォト)
元鶴竜、“先達の親方衆の扱いが丁寧”と協会内の評価が急上昇、一方の元白鵬は部屋閉鎖…モンゴル出身横綱、引退後の逆転劇
週刊ポスト
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”川崎春花がついに「5週連続欠場」ツアーの広報担当「ブライトナー業務」の去就にも注目集まる「就任インタビュー撮影には不参加」
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(時事通信フォト)と事故現場
広末涼子、「勾留が長引く」可能性 取り調べ中に興奮状態で「自傷ほのめかす発言があった」との情報も 捜査関係者は「釈放でリスクも」と懸念
NEWSポストセブン
筑波大の入学式に臨まれる悠仁さま(時事通信フォト)
【筑波大入学の悠仁さま】通学ルートの高速道路下に「八潮市道路陥没」下水道管が通っていた 専門家の見解は
NEWSポストセブン
広末涼子容疑者(時事通信フォト)と事故現場
《事故前にも奇行》広末涼子容疑者、同乗した“自称マネージャー”が運転しなかった謎…奈良からおよそ約450キロの道のり「撮影の帰り道だった可能性」
NEWSポストセブン
長浜簡易裁判所。書記官はなぜ遺体を遺棄したのか
【冷凍女性死体遺棄】「怖い雰囲気で近寄りがたくて…」容疑者3人の“薄気味悪い共通点”と“生活感が残った民家”「奥さんはずっと見ていない気がする」【滋賀・大津市】
NEWSポストセブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《中山美穂さん死後4カ月》辻仁成が元妻の誕生日に投稿していた「38文字」の想い…最後の“ワイルド恋人”が今も背負う「彼女の名前」
NEWSポストセブン
山口組分裂抗争が終結に向けて大きく動いた。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
「うっすら笑みを浮かべる司忍組長」山口組分裂抗争“終結宣言”の前に…六代目山口組が機関紙「創立110周年」をお祝いで大幅リニューアル「歴代組長をカラー写真に」「金ピカ装丁」の“狙い”
NEWSポストセブン