ちょうど30年前の1993年。自社「55年体制」の“壁”が打ち破られ、自民党が結党以来初めて野党に転落した──その立役者である“政界の壊し屋”小沢一郎氏が今、永田町で再び精力的に動き出している。その目的は何か。新刊『壁を壊した男 1993年の小沢一郎』を上梓したフリージャーナリストの城本勝氏がインタビューした。【全3回の第1回】
自民の既得権を突き崩す
──まずお聞きしたいのは、今の岸田(文雄)政権をどう見ているか、ということです。
「岸田政権も、小泉(純一郎)、安倍(晋三)政権以来の新自由主義的な路線を基本的に引き継いでいるが、その二人とは違って口もパフォーマンスもうまいほうじゃない。総理としての理念やビジョンを持っている訳でもない。ただ何となく過ごしているというのが現状に見える」
──それでも岸田政権は一定の支持を得ている。
「何もしないことが、逆に悪い人ではないみたいに見られている。日本人には好まれるキャラクターだ。それに自民党内に実力者がいなくなった。世界的な激変とかよほどのことがない限り、多分来年の自民党総裁選も岸田さんの再選だろう」
──6月には岸田首相自ら解散風を吹かせる騒ぎもありました。
「冷静に利害打算にすれば解散なんかしないだろうと僕は何度も言った。その通りになった。経済と国民生活はじわじわとじり貧になっているが、まだみんな食べられているから不満も少ない。その間は自民党政権も続く可能性が高いと思う。解散はしばらくないだろうし」
──野党に勢いがないことも岸田政権を助けている要因ではないですか?
「そう。全く力のない野党が存在することが、政治的には自公政権が続く最大の理由だ。野党への期待が薄れて、結果、一番風当たりが強いのは立憲(民主党)。仮に選挙となった場合、立憲に代わって(日本)維新(の会)が議席を伸ばすという可能性はあるが、政権を取るまでには至らない。
だから野党は力を合わせないと、国民の本当の期待に応えられない。逆に次の選挙までに野党が力を合わせるという合意ができたら、間違いなく政権交代だ」