ライフ

難聴が認知症の引き金になり得る理由 「聞くことにエネルギー割かれ、記憶や解釈がおろそかになる恐れ」

近年、難聴のリスクとして指摘されているのが「認知症」との関係(イメージ)

近年、難聴のリスクとして指摘されているのが「認知症」との関係(イメージ)

 元気に自立して過ごせる期間を「健康寿命」というが、その“延伸”に欠かせないのが「耳」の健康だ。家族や友人との会話は生活の要であるだけでなく、将来的な認知機能の維持にも影響する。

認知症リスクが3倍超!?

 近年、難聴のリスクとして指摘されているのが「認知症」との関係だ。

「難聴は認知症の重大な原因である」──そんな学説が2017年の国際アルツハイマー病会議(AAIC)で発表され、ここ数年、大きな注目を集めている。日本耳鼻咽喉科頭頸部学会認定の補聴器相談医・大場俊彦医師(慶友銀座クリニック院長)が解説する。

「2017年のAAICでランセット国際委員会が発表したのが『認知症症例の約35%が修正可能な9つの危険因子による』というもので、高血圧・肥満・糖尿病などとともに難聴が挙げられました。なかでも難聴は『予防できるうちで最も大きな認知症の危険因子』と指摘されています」

 ランセットの疫学調査では、アルツハイマー型認知症患者の約9%が難聴に起因しており、加齢に次ぐリスク因子であることが判明した。

 また、2011年の米ジョンズ・ホプキンズ大の研究では、軽度難聴者の認知症発症リスクは、難聴でない人の2倍に達し、中等度難聴者では3倍に上がると発表されている。川越耳科学クリニック院長の坂田英明医師が言う。

「難聴と認知症の関係については、脳のエネルギーの問題が指摘されています。難聴の人ほど『聞こう』と強く意識するあまり脳に負荷がかかりすぎ、活性酸素が増えた結果老化が進んで処理能力が低下する、という考え方です」

 逆に言えば、「難聴の治療が認知症予防につながる可能性」がある。大場医師が指摘する。

「耳が悪くなって聞くことにエネルギーが割かれると、記憶や解釈がおろそかになり、人とのコミュニケーションが乏しくなる恐れがあります。引きこもりがちになって、それが認知症の引き金になることもあり得る。早めに難聴に対処することが、将来の認知症予防につながると言えます」

関連記事

トピックス

小磯の鼻を散策された上皇ご夫妻(2025年10月。読者提供)
美智子さまの大腿骨手術を担当した医師が収賄容疑で逮捕 家のローンは返済中、子供たちは私大医学部へ進学、それでもお金に困っている様子はなく…名医の隠された素顔
女性セブン
吉野家が異物混入を認め謝罪した(時事通信、右は吉野家提供)
《吉野家で異物混入》黄ばんだ“謎の白い物体”が湯呑みに付着、店員からは「湯呑みを取り上げられて…」運営元は事実を認めて「現物残っておらず原因特定に至らない」「衛生管理の徹底を実施する」と回答
NEWSポストセブン
北朝鮮の金正恩総書記(右)の後継候補とされる娘のジュエ氏(写真/朝鮮通信=時事)
北朝鮮・金正恩氏の後継候補である娘・ジュエ氏、漢字表記「主愛」が改名されている可能性を専門家が指摘 “革命の血統”の後継者として与えられる可能性が高い文字とは
週刊ポスト
英放送局・BBCのスポーツキャスターであるエマ・ルイーズ・ジョーンズ(Instagramより)
《英・BBCキャスターの“穴のあいた恥ずかしい服”投稿》それでも「セクハラに毅然とした態度」で確固たる地位築く
NEWSポストセブン
箱わなによるクマ捕獲をためらうエリアも(時事通信フォト)
「箱わなで無差別に獲るなんて、クマの命を尊重しないやり方」北海道・知床で唱えられる“クマ保護”の主張 町によって価値観の違いも【揺れる現場ルポ】
週刊ポスト
火災発生後、室内から見たリアルな状況(FBより)
《やっと授かった乳児も犠牲に…》「“家”という名の煉獄に閉じ込められた」九死に一生を得た住民が回想する、絶望の光景【香港マンション火災】
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン