「昨年末、歯周病で奥歯を抜歯したらドライソケットになっていると言われて、鎮痛剤をのみながら1か月も痛みに耐えました。けど、今年4月にまた別の奥歯が歯周病だと言われ、抜歯をすすめられてしまって……。その歯医者に通うのが憂鬱になり、別の歯科医院に行ってみたんです」
そう話すのは、愛知県在住のパート・Fさん(48才)。ドライソケットとは抜歯した穴が塞がらずに骨が露出し、細菌感染して激しい痛みが続く状態のことだ。
「新しい歯医者に行くと、“治療も可能なので、抜かない選択肢もありますよ”と言われました。レントゲン写真を見ながら“前回も抜歯せずに、しかも痛い思いもせずにすんだかもしれない”と言われたときは、前の歯医者に通ったことを心底後悔しました」(Fさん)
東陽町歯科医院院長の大谷直さんが言う。
「歯周病治療や根管治療が進歩して、いまは歯を残せることが多くなっています。インプラントをすすめる歯科医が多いと聞きますが、インプラントは抜歯ありきの治療。もしかするとその歯は抜かなくてもすむかもしれない。
親知らずも、昔は一律で抜いていましたが、まっすぐ生えていれば抜かなくていい。抜くと隣の大臼歯がぐらつくこともありますし、親知らずを残しておけば、将来、隣の歯が悪くなったときにブリッジや義歯の土台にできますから」
虫歯治療も銀歯ではなく、いまは白くて目立たないコンボットレジンが主流だ。
「年配の医者はいまでも銀歯治療をする人が多いですが、銀歯は見た目が悪いし、レジンに比べて歯を削る量が多くなる。そもそも初期虫歯であれば、歯は削らない方法にシフトしつつあります」(大谷さん)
レジン治療が主流になったいまでも、強い負荷がかかる奥歯には堅牢な「銀歯の被せ物」と決めている歯科医は多い。だが、銀歯は避けたいという人に朗報がある。
「保険で『CAD/CAM冠』という、白い被せ物が可能になりました。レジンとセラミックのハイブリッド素材で、天然の歯と見た目は変わりません。ただし、この治療法にもデメリットはあるので、歯科医からしっかり説明を受けて選択してください」(『やってはいけない歯科治療』〈小学館〉の著者でジャーナリストの岩澤倫彦さん)