国内

60代女性記者が目にした「認知症の叔母によって破壊されそうになった家族関係」

認知症の母

認知症を抱える人が家族に及ぼしてしまう影響について、野原広子氏が考えることとは

 もし身内が認知症を患ったらどうなるのか──。『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子氏は、認知症が人間関係を壊してしまいそうになる瞬間を体験した。オバ記者が綴る。

 * * *
 なんでもそう。人は自分の目の前に迫ってこないと何もわからないんだな、と日々実感しているんだけどね、今回私がそう思ったのが「認知症」よ。

 同世代の知人が認知症の母親との日々をSNSで配信していて、クスリと笑ったり、ほっこりしたり、時には考えさせられたりしていたけど、私が目にしたのはそんな生易しいもんじゃない。家族関係を破壊しかねないほどのことだったの。

 叔母、つまり母親の6才年下の妹(88才)は一戸建てに叔父亡き後、ひとり暮らしをしてきたけど、その叔母がおかしくなったのはいつだったかしら。子供の頃は、東京での寄宿先として毎年夏になると滞在していたし、私が上京してからは実家もどきよ。それが、叔母が60代後半になった頃から行くとイヤな思いをするようになったの。

 ふとした言葉のやり取りから「だからお前ダメなんだよ」と頭ごなし。「いい気になってんじゃないよ」「ふんっ、くだらないッ」と私をつぶしたうえで、自説をとうとうと述べる。でもこれを私は認知症と思ったことはない。ちょうどその頃、叔父が亡くなったので寂しいんだろうなと、どこかで同情していたんだわ。

 だからといって、顔を合わせたらイヤな思いをすることが決まっている人に会いたくはない。何かのはずみで怒鳴り合いになり、「ああ、もう次に会うときは、彼女が写真になったときだわ」と、キッパリと心に刻んだこともある。

 そんな関係が好転するきっかけになったのが、叔母より3才年上のO氏(91才)の出現だ。町会の仕事で知り合ったとかで、叔母いわく、「とにかく面白い人だから会ってごらんよ。オペラが好きだっていうし、ヒロコちゃんと気が合うと思うよ」とやけにしつこい。そこまで言うならと会ってみたら、まあ、大正解! 話の面白さは私史上ナンバーワンで、最初は叔母と3人で会っていたけど、そのうち、最年長のボーイフレンドとして叔母抜きでご飯をごちそうになりだしたの。このO氏がまた無類の世話焼きで、叔母の家の困りごと全般を引き受けてくれるわ、猫のエサを買って届けてくれるわ。ほんと、O氏から受けた親切を数えたらきりがない。気のキツイ叔母もO氏の悪口だけは言わなかったもの。

 それが2年前のあるとき、3人で食事に行こうと顔を合わせるなり、叔母とO氏がいつになくぎこちない顔をしているのよ。O氏が席を外した頃合いで叔母は「ったく、タクシーの道順のことでわからんことを言うから怒鳴っちゃったのよ」と言う。O氏にあとで確認したら、「いや、いきなり怒鳴るからビックリしたよ」と言う。まぁ、それが前兆だったのかもね。以来、キツイではすまない“おかしなこと”を言うようになったんだよね。

 たとえば、義父の法事で茨城までひとりでやって来るなり、道中で起きたことを延々話してやめなかったり、いよいよもうダメだと思ったのは、あれだけ世話になったO氏に対する不信感を爆発させたことよ。

 この春、叔母が「自宅の鍵をなくした」という騒ぎを起こしたので、心配したO氏が合鍵を2本作ってくれたの。その話を私はO氏から聞いている。ところが叔母は電話で「私、見たのよ。Oさんが知らない男の人にうちの鍵を渡しているところを。Oさんに聞いても『知らない、知らない』って。おかしいと思わない?」と言う。

 叔母はこの話を自身の娘(58才)に話したの。娘は地方に住んでいて、O氏と会ったことがない。だから「私も忘れっぽくはなったけど、見たものは見たんだから」と強く言い張る母親の言い分を真に受けたの。もしこのとき、O氏と娘が顔を合わせて話していれば誤解は一瞬で解けたはず。だけど間の悪いことに、O氏は持病を悪化させて入院中。その間に、叔母と娘の妄想がふくらんで、「じゃあ、業者を呼んで鍵を変えよう」ということになった。

 そしたら叔母と娘の間でO氏の悪者像がますますふくらんで、私からしたらとても正気とは思えないメールが送られてきたりしたの。日常の基軸がズレまくっている気持ち悪さといったらない。

「逃げろ!!」

 そのとき私はそう思ったわよ。あとは法定相続人で解決して、と。まだら認知症のまだらの部分がある限り、親切が仇になる。きっと日本中でこういうトラブルが起きていると思うよ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
事業仕分けで蓮舫行政刷新担当大臣(当時)と親しげに会話する玉木氏(2010年10月撮影:小川裕夫)
《キョロ充からリア充へ?》玉木雄一郎代表、国民民主党躍進の背景に「なぜか目立つところにいる天性の才能」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
米利休氏とじいちゃん(米利休氏が立ち上げたブランド「利休宝園」サイトより)
「続ければ続けるほど赤字」とわかっていても“1998年生まれ東大卒”が“じいちゃんの赤字米農家”を継いだワケ《深刻な後継者不足問題》
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン
連日お泊まりが報じられた赤西仁と広瀬アリス
《広瀬アリスと交際発覚》赤西仁の隠さないデートに“今は彼に夢中” 交際後にカップルで匂わせ投稿か
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《離婚するかも…と田中圭は憔悴した様子》永野芽郁との不倫疑惑に元タレント妻は“もう限界”で堪忍袋の緒が切れた
NEWSポストセブン