自殺報道の最後に表示される「いのちの電話」の番号。しかし最近では相次ぐ有名タレントに関わる自殺報道の影響や、相談員の高齢化による人員減などがあり、「かけてもつながらない」という状態が続いているという。
しかし、予算や人員を増やしてすべての電話を取れるようにすべきかというと、ことはそれほど単純ではない。「いのちの電話」は寄付金と助成金で運営される市民団体で、電話を取る相談員は無償のボランティアで活動しているからだ。
「千葉いのちの電話協会」事務局長の斎藤浩一氏が説明する。
「相談員はシフト制で、24時間365日の対応をしています。お互いに匿名で、一期一会で対等な立場でお話を聞くというのが基本。医療機関と違ってお金を取らないからこそ、隣人として聞ける話があると思っています。
運営費用は半分が寄付金で、3~4割が政府や全国社会福祉協議会からの助成金になります。ここ3年の平均費用は1900万円ほどでした」
研修費は自己負担
「いのちの電話」の成り立ちは、1953年にイギリス・ロンドンで自殺予防のために電話相談を始めたボランティア団体に遡る。日本では1971年に東京で活動が開始され、拡大してきた。
相談員は無給であるだけでなく、相談員になるには1年以上の研修を受ける必要があり、数万円の研修費も自己負担だ。
「愛知いのちの電話」の相談員の60代男性はこう語る。
「医療ソーシャルワーカーの仕事を30年続けて、定年退職後に相談員になりました。月に3~4回入り、3時間半の間に4~5件の電話を取ります。私たちは『傾聴』と言って聴くことに徹することを研修で教わるのですが、話すうちに自分の気持ちが整理できたと感謝されることもあり、そんな時にやりがいを感じます」