横綱・照ノ富士が途中休場、大関・貴景勝が全休のなか、12勝3敗の関脇・豊昇龍(24)が平幕・北勝富士との優勝決定戦を制し、初の賜杯を抱いた7月場所。3関脇が“トリプル大関取り”に挑むなか、関脇の大栄翔、若元春はともに9勝6敗に終わり、豊昇龍だけが昇進となった。
しかし、好角家として知られ、7月場所も溜席で観戦したタレントの大村崑氏は、「厳しい言い方をすれば、1横綱1大関不在のなかで、豊昇龍の成績も物足りないようにも思えます」と話す。
「どの力士も大関相手となれば、がむしゃらに向かってきます。だからこそ、関脇でズバ抜けた成績を残して昇進しないと、すぐにカド番や陥落となってしまう。12勝3敗ですから、慌てて昇進させなくてもよかった気もします。ただ、モンゴル出身力士は国を背負って土俵に上がる気迫、執念がある。こうなった以上はもうひとつ上を目指して努力してもらいたい」
好角家らしい注文だが、協会関係者の間でも7月場所の結果を素直に喜べない向きがあるようだ。
「満員御礼が15日間続いたのはよかったが、協会としては“トリプル大関昇進”になってほしかったところでしょう。典型的な押し相撲の大栄翔、左四つの型を持つ若元春、鋭い踏み込みから土俵上で暴れ回る豊昇龍と、三種三様の取り口は興行的に魅力がありますから。
NHKの中継ではアナウンサーや解説者がやたらと“(3場所)33勝は(昇進の)目安であって内規ではない”と言っていたが、協会としても勝ち星の数にこだわらず、昇進のハードルを下げたい思惑があったのでしょう」(相撲ジャーナリスト)
ただ、大栄翔と若元春は2ケタ白星にも届かず、昇進はおろか大関取りは振り出しに戻った状況だ。そうしたなか、豊昇龍の単独での昇進には後ろ向きな声もあり、「あと1敗でもしていたら関脇に据え置かれた可能性もあった」(同前)という。
「すでに横綱・照ノ富士、大関・霧島というモンゴル勢が上位を占め、興行的な盛り上がりを懸念する声もあるし、最近のモンゴル勢は仲が良すぎるように見える。霧島と豊昇龍はモンゴルで同じ柔道クラブに通っていた。遠慮なしに全力でぶつかって土俵を盛り上げられるのか心配される。あとは、やはり暴力沙汰で廃業した朝青龍の甥っ子で、今も関係が深いということのマイナスイメージも懸念されている」(同前)
※週刊ポスト2023年8月11日号