ライフ

令和の時代に脚光を浴びる「レディース」 なぜ「特攻服少女」に心惹かれてしまうのか

根底に流れる「仁義」を新鮮に感じるのでは、という声も

根底に流れる「仁義」を新鮮に感じるのでは、という声も

《まさに『ティーンズロード』全盛期に高校生。本当に懐かしくて……レディースに入る勇気はもちろんなかったから、髪形とか持ってるファッションブランドとか、形だけ真似しながら悶々としていたあの頃の記憶がよみがえってきました》(40代女性)

《女暴走族って、本当にいたんだ!というのがいちばんの驚き(笑い)。けんかとかタイマンとか、正しいことばかりじゃないんだろうけれど、女子だけで一生懸命何かに打ち込む姿が、ちょっとうらやましいと思った》(20代女性)

 レディースを主役にした異色の雑誌『ティーンズロード』の創刊編集長・比嘉健二さんが彼女たちと「活字のマブダチ」として過ごした濃密な5年間を綴り、第29回小学館ノンフィクション大賞を受賞した『特攻服少女と1825日』。幅広い世代から反響が届いており、その中でもとりわけ多かったのは「レディースという存在に心惹かれた」という声だった。

 カリスマ書店員・エッセイストとして活躍しながらストリッパーとしてデビューした新井見枝香さんもそのひとり。

「彼女たちの“儚さ”に惹きつけられました。『17才の夏でチームを引退』とか、レディースって終わりの時期が決まっているんですよね。誰もがみんな、時が来たら卒業して全然違う人生を生きていく。私もかつて“コギャル”だった時代があって、根本はヤンキーとは違っていたけれど、『一生ギャル宣言』なんて言いつつ、本当に一生続くなんて全然思っていなかった(笑い)。だけど、だからこそいまにすべてを捧げられた、そんな気持ちを思い出しました」(新井さん)

 ほかにも『ティーンズロード』誌上でカリスマ的な人気を博し、『特攻服少女と1825日』の主人公のひとりでもある栃木県の「貴族院・女族」元総長のかおりさんがSNSで“バズる”など、30年の時を経て、特攻服少女がふたたび脚光を浴びているのだ。なぜいま、彼女たちに心惹かれてしまうのか──。

もし上司がレディース総長だったら

「彼女たち、見た目からは想像がつかないくらい礼儀正しいんです」

 そう振り返るのは、いまから30年前、人気レディースチーム「紫優嬢(しゅうじょう)」を取材した本誌記者。

「当時の彼女たちは言わば“社会現象”でした。もともと『ティーンズロード』で絶大な人気を誇っていた紫優嬢のメンバーの知名度を全国区に押し上げたのは、有名カメラマンの篠山紀信さんが撮影した写真が『週刊SPA!』に掲載されたこと。文章を書いたのは当時、サブカルチャーの旗手として飛ぶ鳥を落とす勢いだった中森明夫さんでした。それをきっかけにテレビでも特集され、『女性セブン』でも、その実態を探るべく現場ルポを行ったのです」(本誌記者・以下同)

 約束した取材場所である埼玉県の東松山駅に恐る恐る向かった記者だが、反故にされることもなくチームのメンバーは時間どおり集まり、撮影やインタビューが行われた。

「芸能人や文化人に劣らず彼女たちは、自らの生き方をきちんと言葉にして語ってくれました。見た目こそ紫色の特攻服に明るい髪と派手でしたが、中身は『チームの掟』を守ろうとする硬派な集団でした」

 その掟も“カツアゲ禁止”や“レディース活動のときは遅刻厳禁”など、いたって真面目なもの。

「メンバーには、不登校だったり、両親が共働きで忙しかったりして、仲間や居場所が欲しかったと話す子が少なくなかったことが印象に残っています。いまふたたびムーブメントが起きているのは、インターネットで簡単につながることができる半面、彼女たちのように生身の人間同士が時にはぶつかり合いながらも集団行動をする機会が減っていて、新鮮に見えたりうらやましく思ったりする人が増えていることの表れなのだと思います」

 新井さんも「彼女たちの持っている“仁義”を新鮮に感じる若い世代が多いのでは」と分析する。

「また、日本人の心の根底に“筋を通す”“仁義を切る”という心意気をよしとする共通の観念があるのかもしれない」

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
X子さんフジ退社後に「ひと段落ついた感じかな」…調査報告書から見えた中居正広氏の態度《見舞金の贈与税を心配、メッセージを「見たら削除して」と要請》
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレが関東で初めてファンミーティングを開催(Instagramより)
《新メンバーの名前なし》ロコ・ソラーレ4人、初の関東ファンミーティング開催に自身も参加する代表理事・本橋麻里の「思惑」 チケットは5分で完売
NEWSポストセブン
中居氏による性暴力でフジテレビの企業体質も問われることになった(右・時事通信)
《先輩女性アナ・F氏に同情の声》「名誉回復してあげないと可哀想ではない?」アナウンス室部長として奔走 “一管理職の職責を超える\"心労も
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
【女占い師が逮捕】どうやって信者を支配したのか、明らかになった手口 信者のLINEに起きた異変「いつからか本人とは思えない文面になっていた」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン