「シンデレラ体重」とは主に、ダイエットに熱心な若い女性たちの間で目標にされる“よりスリムできれいに見える、BMI18以下”【※】の体重のこと。一般的にBMIは22前後がもっとも病気になりにくい「標準体重」であることから考えても、明らかにやせすぎだ。
【※「体重(kg)÷身長(m)の二乗」から算出される、肥満度の1つの指針になる数値のこと。体格指数】
ただでさえ日本人は“やせ信仰”が強いが、「やせている方が健康」という考え方は、大きな間違いだ。特に更年期以降に体重や体脂肪が増えるのは自然なこと。ダイエットカウンセラーで管理栄養士の伊達友美さんは、「更年期以降の女性は特に油断大敵」と語る。
「『油』を『断つ』のは、大きく健康を害します。脂質は女性ホルモンの大切な材料であり、女性ホルモンは自律神経や代謝のコントロールにも深くかかわっているため、脂質を断つとかえって代謝が悪くなり、むしろ太りやすくなることもあるのです。
また、極端なダイエットで栄養が枯渇すると、体は脳や心臓など、より生命維持に不可欠な部分に優先的に栄養を届けようとします。そのため、子宮や卵巣など『繁殖』という、いま自分が生きるのには必要のないことにかかわる部分は後回しにされ、真っ先にトラブルが出るのです」(伊達さん)
生殖器の次は髪や爪、肌など、体の“末端”に不調が出る。とはいえ、手当たり次第に油を摂るのは逆効果。管理栄養士の望月理恵子さんがアドバイスする。
「ファストフードなどの質の悪い油ではなく、体内でつくり出せない『オメガ3系脂肪酸』を豊富に含むあまに油やえごま油、魚の油に含まれるDHAやEPAなどを積極的に摂りましょう。ただしこれらの多くは熱に弱いので、炒め油などに使うのは避けて、出来上がった料理にかけて食べることをおすすめします」
長らく流行している糖質制限も、やりすぎは女性の体を壊す。スイーツを減らすのはいいが「炭水化物抜きダイエット」はそれほど効果がない。
「糖質で太るのは、血糖値が急激に上がり、脂肪を蓄える働きをもつインスリンが分泌されるから。砂糖は血糖値を急激に上げますが、お米などはでんぷんも含む『複合糖質』のため、砂糖と比較すると血糖値の上昇はゆるやか。そのため、毎食お米を制限しても、あまり意味がないのです。糖質制限をするなら、1日のうちでもっとも血糖値が上がりやすい夜だけにするのがいい」(望月さん)
また、炭水化物には食物繊維も含まれるため、過度の糖質制限は便秘も招く。食事量が減れば便の量が減るのは自然の摂理。にもかかわらず、それに気づかず便秘薬をのむような“思い込み便秘”の人も少なくない。さらに中には、食事を減らしすぎた結果、お腹が空いて眠れなくなる“思い込み不眠”の人もいる。
「“食べてすぐに寝ると太る”といわれていますが、必ずしもそうではありません。むしろ“夕食を摂ったばかりで寝たら太る”と睡眠時間を減らす方が、代謝が落ちて太りやすくなる。食後すぐに眠くなったら無理せず眠っていいのです」(伊達さん)
年を重ねた女性が健康を保ったままきれいにやせるために脂質、糖質と併せて欠かせない栄養素がたんぱく質。不足すると、肌の老化や白髪、筋力不足による腰痛や肩こり、ひどければ全身の筋力が低下して動けなくなる「サルコペニア」を引き起こす。
「たんぱく質は体をつくるもとになるので、不足していると、ほかのものをたくさん食べていても脳が満たされず“いくら食べてもお腹が空く”という状態になることもあります。肉や魚、卵だけでなく、お米にも植物性のたんぱく質が含まれています」(伊達さん)