【週刊ポスト連載・医心伝身】骨粗鬆症は閉経後の女性の病気だと思われているが、実は男性患者も増えている。加齢によるホルモン低下だけが原因でなく、糖尿病や関節リウマチ、前立腺がんのホルモン療法の続発性骨粗鬆症も多いのだ。しかも、骨粗鬆症は自覚症状がほとんどない。骨折して初めて気づいたりする。なにより骨粗鬆症による骨折は寝たきりや死亡リスクが高まるので注意が必要だ。
骨は破骨細胞が古い骨を壊して吸収しながら、骨芽細胞が新しい骨を作るリモデリングを日々行なっている。この流れがうまく機能していないと、骨の吸収ばかりが進み、骨粗鬆症が進行して骨折しやすくなる。
女性の場合、閉経で女性ホルモンが急減、骨吸収が進むために発症リスクが高い。逆に男性は急なホルモン低下がないので、骨粗鬆症は関係ないと思われていた。しかし、高齢者が増えるにつれ、骨粗鬆症の患者が増えている。近畿大学医学部公衆衛生学の伊木雅之名誉教授に聞く。
「男性の場合はホルモン低下による原発性骨粗鬆症よりも、他の原因による続発性骨粗鬆症が多い傾向にあります。例えば前立腺がん治療としてホルモン療法を行ないますが、これによって骨粗鬆症を発症してしまう患者さんがいます。また膠原病や関節リウマチでステロイド治療をすると、骨吸収が増えて骨形成が減ったりします。そして、最も怖いのが、糖尿病が原因の骨粗鬆症です」
糖尿病では骨の再構築回数が減少することがわかっている。骨のリモデリングのスピードが遅くなり、長期にわたって古い骨が残る。残った古い骨にカルシウムが沈着すると石灰化し、見かけ上は骨密度が上がるが、古い骨なので骨内には老廃物が溜まってしまい、脆くなってしまう。
骨は外側の皮質骨という硬い部分と、中心の網目状の海綿骨で形成されている。糖尿病による骨粗鬆症では海綿骨の一部が、何か所も小さな骨折を起こし、ある時点を境にグシャッと骨が折れる。大きな骨折を起こすまで、本人はまったく気づかず、潜在化している患者も多い。