巨人の4番・岡本和真が原辰徳監督の「いた?」発言にカウンターパンチを喰らわせた──。8月1日のヤクルト戦で菅野智之の力投虚しく0対1で敗れると、原監督は試合後、チャンスで打てず、4打数ノーヒットに終わった岡本に対して皮肉交じりに「和真いた? 今日」とコメント。これに発奮したのか、翌2日に岡本は初回に逆転2ラン、5回にもダメ押しのソロと2本塁打を放って勝利の立役者となった。
お立ち台に呼ばれると、「昨日は“空気”と言われたので今日はちょっとはおったんかなと思います」と前日の原監督の発言を引き合いに出して、ファンの笑いを誘った。3日のヤクルト戦でも2発を放って、再びお立ち台で「また“空気”って言われないように頑張ってたので」と言って、球場を盛り上げた。
「岡本は普段から朴訥とした喋りで笑いを誘う。WBCの時はお立ち台で『最高です』を連発して賛否両論ありましたが、この2試合で見せたように喋りのセンスがある。普通は監督の発言を引き合いに出せないですよ。さすが巨人の4番を張る大物だけあって度胸がある」(スポーツライター・以下同)
最近のプロ野球選手のヒーローインタビューでは、「最高です」を常套句のように繰り返し、「明日からも応援よろしくお願いします」と締める、いわば優等生的な発言が目立っていただけに、岡本の発言は際立った。
無難なヒーローインタビューが増えた転機
「古い話になりますが、1989年の日本シリーズで3連勝して日本一に王手をかけた近鉄の加藤哲郎が巨人打線を『フォアボール出さなければ、打たれそうな気がしなかったんで』『まあ、大したことなかったですね』と語った。このヒーローインタビューに発奮した巨人が4連勝で逆転日本一になった。
加藤は新聞記者などの囲み取材で『巨人はロッテより弱い』と言ったとも伝えられました。その年、ロッテはパ・リーグの最下位でしたし、当時は巨人ファンの割合が今以上に多かったため、大きな話題になりました。この一件以来、ヒーローインタビューや取材時には相手チームを刺激しないという暗黙の了解が広まり、無難なインタビューが増えていった印象です」
加藤の発言は対戦相手に対してだったため、波紋が広がった。しかし、あれから34年が経ち、岡本は敵ではなく、味方の監督のコメントを引用してぶつかっていき、笑いを誘った。
「今までにない新しい形ですよ。これなら敵を刺激することもないし、ファンも笑える。こんなパターンがあったかと目から鱗が落ちました。ヒーローインタビューのコペルニクス的転回が起こったと言っていい。プロ野球にはグラウンド外でのエンターテイメント性も必要ですから、これからも原監督と岡本にはどんどんやり合って欲しい」