1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、夏競馬の特徴と見どころについてお届けする。
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毎日暑いですね。こんな中、文句も言わずに全力で走ってファンを楽しませてくれる馬ってえらいと思いませんか?
夏競馬になると騎手は活動の拠点を決めます。函館や札幌で騎乗しようというなら、日々の調教もあるので、そちらに滞在するようになります。こういう中で、ふだんあまり交流がない関西の騎手や調教師と知り合いになることもあります。
僕の場合はその年その年で違っていました。やはりこの時期は新馬のデビューがあるので、早くから騎乗依頼を受けたり、あるいは乗りたいと思っている馬の出走予定に合わせたりすることもありました。
近年暑くなったとはいえ、本州に比べればやっぱり涼しいから馬も人も楽だと思います。とくに湿度が低いというのが馬にはいい。湿度が高いと、汗をかいて体のバランスが崩れやすくなります。
函館競馬場と札幌競馬場は洋芝といって、本州の競馬場で使われる野芝に比べると、寒さに強く保水性が高い。その代わり耐久性がないといわれますが、いまは開催期間が以前より短くなったからいいのでしょう。
札幌競馬場はかつてダートしかなくて、僕が若手ジョッキー時代に芝コースができました。その当時は芝が本当に深くて柔らかく、走っていても蹄の音がしませんでした(笑)。走破時計も野芝にくらべると遅くなるので、そういう馬場が得意な馬が好結果を出すことがあるわけです。研究が進み、いまではだいぶ高速化してきましたが、それでもこのコースが合う馬は、やはり芝の深い欧州でもいいのではないかなどと言われたりしますね。
新潟競馬場は磐越道ができたことで美浦から行くのは便利になりましたが、僕が若い頃は滞在競馬でした。夏はとにかく暑いのですが、海が近いから風が入って朝晩は割と涼しいんです。馬主さんが来てくれたりすると、日曜の夜なんかは市内に出て一緒にご飯を食べたりしていました。
夏競馬のもう一場は小倉ですが、関東馬が出向くことは夏場の輸送を考えると馬の負担が大きい。僕自身、小倉は重賞があって乗りに行くというイメージですね。長かったジョッキー生活の中でも夏の小倉に出かけて行ったのは4回だけですが、強い馬の依頼をいただいて、1日4勝したこともありました。