寝苦しい熱帯夜が続いている。しかし、寝付きの悪さや目覚めの悪さに悩む人たちも、少しの工夫で朝まですっきり寝られる可能性がある。睡眠の専門家が快眠テクニックを解説する。
睡眠不足になってはいけないと考えて就寝・起床時刻にばかり注意が向かいがちだが、むしろ重要なのは「睡眠の質」だという。RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック理事長で睡眠専門医の白濱龍太郎氏が語る。
「いくら眠る時間を長く取っても“睡眠の質”が悪ければ、日中のパフォーマンスが落ちます。寝付けない、夜中に何度も起きる、寝ても疲れが取れない、目覚めが悪いなどの自覚症状がある人は質の悪い睡眠しか取れていない可能性があります」
蒸し暑く寝苦しい夏は特に睡眠の質が悪くなる。ぐっすり眠るにはどうすればいいのか。
「人は睡眠中に眠りの浅い『レム睡眠』と深い『ノンレム睡眠』を繰り返します。ノンレム睡眠のなかでも最も深い『深睡眠』をひと晩で2回取れれば、質の良い睡眠になると考えられています。ただし、眠りを促すホルモンであるメラトニンの分泌量は加齢とともに低下。同時に自律神経も乱れやすくなり、体を緊張状態にする交感神経が優位になることで深睡眠を取りにくくなっていきます」(白濱氏)
深睡眠を取るためには「規則正しい生活サイクル」が肝要となる。睡眠栄養指導士協会代表理事の河野記代子氏が語る。
「朝起きたら太陽の光を浴びて体内時計をリセットし、朝食はメラトニンの元となる必須アミノ酸のトリプトファンを多く含む魚や大豆製品、キノコやわかめを使った和食を食べる。昼寝は15分までに抑え、コーヒーなど眠りを妨げるカフェイン入り飲料はお昼以降は我慢して、日が暮れていくとともに室内の照明を落として夜の睡眠に備えましょう」
自然の動きと合わせた生活リズムが大切ということだ。
首がS字を描くように
とはいえ、昼夜の境界が曖昧な現代社会では、生活リズムの乱れを改善しにくい。そこで高機能な寝具を購入するのもひとつの手だが、お金をかけずに快眠を目指す方法がある。
白濱氏は、「体の中心部の体温である『深部体温』を上げるストレッチが効果的だ」と語る。
「深部体温は内臓など体の深い部分の体温のこと。人間の体は、朝起きる頃に上がった深部体温が夕方から夜にかけて少しずつ下がることで眠くなるのですが、寝付きの悪い人は夜になっても深部体温が下がりません。そこで、眠りにつく1時間半ほど前にストレッチをして深部体温を上げておくと、反動で深部体温が下がっていき、深睡眠につながります」(白濱氏)