TBS日曜劇場『VIVANT』(ヴィヴァン)で主演の堺雅人(49)。商社マンを演じる姿に絶賛の声が上がっている。2004年のNHK大河ドラマ『新選組!』の山南敬助役でブレイクし、社会現象となったドラマ『半沢直樹』(2013年・TBS系)などの話題作に出演。堺はいかに国民的役者までのぼり詰めたのか。【前後編の後編。前編から読む】
堺は1992年、早稲田大学演劇研究会を母体にした劇団「東京オレンジ」の旗揚げに参加。看板役者として活躍した。
「早稲田の劇研は約100年の歴史を誇る名門で、1年生は基礎稽古や舞台美術などを学びます。2年生になるとアンサンブルと呼ばれる劇研内の劇団に参加したり、独自にアンサンブルを立ち上げたりする。プロを目指す登竜門です」(演劇関係者)
芝居にのめり込み、3年で大学を中退。親には事後報告で勘当されたという。後に引けない状況のなか、芸能事務所に所属して俳優活動に励んだがチャンスに恵まれない。生活に困窮し、道端の雑草を食べたこともあったとテレビのインタビューで明かしている。
大きな転機となったのは、2000年のNHK連続テレビ小説『オードリー』。堺にとって初のテレビドラマのレギュラーだった。堺の母校・宮崎南高校の恩師であり歌人の伊藤一彦氏が語る
「『オードリー』に出ていることは両親に伝えていなかったそう。“主役を張るまでは報告できない”という気持ちだったんでしょう。宮崎の飲み屋で堺君のお父さんに偶然会った時、“息子が『オードリー』に出ているなんて知らなかった”と驚いていましたから」
2004年には『新選組!』でスターダムに駆け上がり、2008年のNHK大河ドラマ『篤姫』では13代将軍で篤姫の夫となる徳川家定を演じ、その人気を盤石なものにした。その陰には堺の尋常ではない“役作り”があったと伊藤氏は言う。
「山南敬助はわざと捕まって切腹しますが、テレビだと切腹の様子を生々しく描けないので、表情だけで彼の複雑な心境を表現しなければならない。だから堺君は『切腹シーンがある映画を何本も見た』と言っていました。
『篤姫』の時は『先生、大正天皇の歌集を読みたいんです』と頼んできたので、歌集を送りました。大正天皇は家定と同じように病弱で在位期間が短かった。“境遇が似ている大正天皇の歌集を読めば家定に近づけるかもしれない”と言うんです」
バーテンダー役の時は千利休を学び“もてなしの心”を研究したそうだ。
「“理解魔”ぶりは高校時代からまったく変わりません。1人では解決できない部分もあったから、相談に来ていたんだと思います。そんな時に頼ってくれたのは素直に嬉しかったですね」(伊藤氏)