この2人がいれば、巨人のクリーンアップは数年先まで安泰か──。今季、巨人は3年目の秋広優人が台頭。松井秀喜の背番号55を受け継いだ男は5月下旬から3番に固定され、7月28日からはセ・リーグの二冠王をひた走る4番・岡本和真の後ろを打つ5番を任されている。
「秋広も岡本も“巨人・松井秀喜の凄さをリアルタイムで見ていない”という共通点があります。松井さんは1992年の夏の甲子園で5打席連続敬遠され、翌年に巨人に入団。1年目の後半には3番を打ち、3年目の1996年には38本塁打を放って、11.5ゲーム差を逆転する“メークドラマ”の立役者になりました。1998年、2000年、2002年は本塁打と打点の二冠王に輝いた巨人の4番です。そして翌年はヤンキースに移籍した。
秋広は2002年生まれですから、記憶には全くない。岡本は1996年生まれですから、巨人時代の姿は幼少時の記憶が少しある程度でしょう。これが今、巨人でプレーする2人にとってプラスになっている側面もあるのでは」(プロ野球担当記者。以下同)
ONの全盛期を知っていた原辰徳の重圧
初代の永沢富士雄から数え、2018年に4番に座った岡本は89代となる。現在、中田翔まで91人の4番打者が誕生している。巨人の4番には打撃の神様・川上哲治、ミスタープロ野球・長嶋茂雄、世界のホームラン王・王貞治と、プロ野球を発展させた打者が名を連ねている。
「現在の原辰徳監督は、現役時代ONと比較され続け、チャンスに弱いと言われました。しかし、通算打率2割7分9厘、382本塁打、1079打点と立派な成績を残した。それでも、評価が数字に比例しなかったのは、ファンがONの残像に囚われていたからでしょう。まして、原本人が長嶋茂雄に憧れて野球を始め、ONの全盛期を知っている。その重圧は大きかったでしょう。
一方、原の次に生え抜きとして4番に定着した松井は長嶋茂雄の引退した1974年に生まれている。1980年に引退した王貞治の現役時代もほとんど見ていないはず。もちろん、その成績や逸話から2人の凄さは知っていたでしょうが、その凄すぎる全盛期をリアルタイムで見ていない。ONと比べられるプレッシャーを必要以上に感じることなく、師匠・長嶋監督と二人三脚で、自分のバッティングの成長に邁進できたのでしょう」