2度目のシーズンMVP獲得に向け、前人未到の活躍を続けるエンゼルス・大谷翔平(29)。大スターをその間近で支えるのが、通訳の水原一平氏(38)だ。彼は、いかにして大谷の信頼を勝ち取り、「唯一無二の通訳」となったのか。(文中敬称略)【全3回の第1回】
イチローの決勝打が契機に
大リーグのオールスターゲーム前に行なわれた恒例のレッドカーペットショー。スター選手たちが彼女や妻とともに歩くなか、スーツ姿で歩く大谷の3mほど後方を控えめに歩くのは、通訳の水原一平だ。全米を沸かせるユニコーンの隣には、いつもこの男がいる。
メジャーリーグ研究家の友成那智は、水原の仕事ぶりについてこう語る。
「メジャーの日本語通訳は車の運転手からプライベートの外出まで、24時間体制でサポートしないといけない。大谷の場合、遠征先ではほとんどホテルから出ないため、食事の面倒までみないといけません。
テレビでは水原さんがタブレットを持って大谷と話しているシーンがよく流れるが、水原さんは大谷のデータ係も務めています。その他、遠征先で殺到するファンから守ったり、練習中に打球から大谷を守ったりと、“用心棒”まで任されている」
水原は、大谷がメジャーに挑戦した2018年シーズンに共に渡米したが、それまでの半生はあまり知られていない。
生まれは北海道苫小牧市。和食料理人の父・英政が米国で和食店を開くため、6歳の時に家族で渡米した。ロサンゼルスにある日本料理屋「古都」のオーナーシェフ・松木保雄(75)は父・英政と古くから親交があり、水原も同店でアルバイトしていた経験があるという。松木が振り返る。
「一平ちゃんがこの店でアルバイトをしていたのは、大学を卒業したころ。ホールで料理をお客さんに持って行く仕事をしていました。時給は当時8~9ドルくらいだったかな。人生を模索している時期だったと思います。
何か手に職を付けなきゃいけないと、当時はカジノのディーラーの学校に通ったという話もしていました。それも性分には合わなかったみたい。時期は少し後だけど、日本酒のメーカーに入社してウチに売り込みに来たこともあったね。一平ちゃんは真面目で誠実ですごく好人物だけど、セールスマンっぽくなくて、営業はあんまりうまくなかったな(笑)」