日本のJリーグ発足前から各国ではこのフーリガン対策に悩まされてきた。イングランドでは1985年に39人の死者を出した「ヘイゼルの悲劇」(事件そのものはベルギーで発生)など多くの犠牲を出した。近年では2022年にインドネシア・リーガ1でアレマFCとペルセバヤ・スラバヤの試合後に負けたアレマ側のサポーターが暴徒化、治安部隊も出動したが130人以上が死亡した。
「お互い真剣ですから熱くなるのはわかる。でも実力行使に出ることはないでしょう。けが人や死人が出てもおかしくなかったと思います」
あくまで被害を受けた名古屋側の話だが、確かに今回の騒動の映像を確認するとレッズ側の黒い服を着たサポーターが多数確認できる。
怖いから誰も注意できない
この件に関して、筆者の元出版社の後輩で古くからの浦和サポに尋ねる。
「全員とはいえないが、そういう集団がいまだにのさばっている。怖いから誰も注意できない。やりたい放題を甘やかして、今回の事件になったと思う。あれでは高齢のコアなファンばかりになって、家族でサッカーを楽しもうというライト層が近寄らなくなってしまう」
浦和サポの中にも暴れる連中を内心ではよく思っていないサポがいる、とも。しかし「やりたい放題」を放置したのはクラブ側はもちろん、何も言えない、むしろ煽る一部の浦和サポにもあると語る。
「ネットでは叩いても、実際にサポ全体で彼らを非難することなどまずない。それどころか媚びへつらったり、ちやほやしたりするサポもいる。盛り上げてくれるから、かっこいいとかでもてはやす。暴れる連中に憧れるサポもいる」
またJリーグ全体の問題、と語るサッカーファンもあった。浦和や名古屋とは別のクラブサポの話。
「浦和は人気クラブです。あれだけ動員できるクラブは多くない。一部の観客動員に悩むクラブにすれば浦和の熱狂的なサポに助けられている部分もある。それはJリーグ(日本プロサッカーリーグ)もJFA(日本サッカー協会)もそうだと思う」
確かに浦和、2022年のJリーグ平均入場者数1位である。熱狂的なサポに支えられている。それでも、先の浦和サポはこう語る。
「1990年代からずっと、他のクラブに比べて格段に騒動を起こし続けたのも浦和とそのサポ集団です。浦和は人気クラブで、前身は三菱のサッカー部という名門だから絶対潰れない、何をしても許される。そうした驕りがあるのでは。レッズの処分もいつもアマアマ、過激なサポーターがいるほうが盛り上がるとでも思っているのか、同じサポーターとして納得いきません」
サポーターは12人目の選手であり、ピッチの選手と共に戦うとされる、炎天下も、極寒の日も、土砂降りであろうと共にある。この応援という「尊い」行為がときとして、一部の声の大きい連中の暴走で汚される。応援の目的外利用で日頃の鬱憤を解消、もしくは自分もまた応援対象のように目立とうとする。他サポどころか自分の応援するクラブのサポすら威圧し、ふがいない試合になればサッカー関係なく暴れ、その日の試合を台無しにする。はっきり言って、シンプルに「応援」をすればいいだけなのに。