世界を席巻する韓流カルチャー。ドラマや映画の制作現場では、どのような特徴があるのだろうか。韓国でも活躍している笛木優子(44才)に聞いた。
韓国では“ユミン”という名で女優活動を行っている笛木。そのきっかけは、1999年に日本公開の韓国映画『八月のクリスマス』を見て、「この映画に出たいと思った」ことだ。
「その頃は短大を卒業し、事務所に所属してオーディションを受ける日々でした。女優として映画にすごく出たいのに、うまくいかない。出たいと思える映画もない。このモヤモヤした気持ちを吹き飛ばしてくれたのが、『八月のクリスマス』でした。
ハン・ソッキュさん(58才)主演で、静かに時間が流れるラブロマンス。私もこんな作品に出たい。そのためには韓国語の習得が必要と思い、韓国行きを決めたんです」(笛木・以下同)
留学中にモデルのバイトができたらと、当時の韓国でいちばん大きかった芸能事務所『エースターズエンターテインメント』に履歴書を送り、延世大学校韓国語課程(語学堂)に通いながらオーディションを受ける中、訪韓からわずか1か月後にドラマ『わが家』への出演が決まった。
「こんなに簡単にドラマに出られていいのかという不安や怖さもありましたが、それよりワクワク感の方が強かった。それに、いただいた役が聴覚障がい者で、手話を使う役どころでしたので、未熟な韓国語を話さなくてもよかったことはラッキーでしたね」
日本のドラマの話数は1クール(約3か月)が一般的だが、韓国の場合、当初の予定が大きく変わることも多い。放送前に大まかなストーリーは決まっているが、放送後の反響でどんどん変わっていく。『わが家』も3か月の予定が、反響が大きかったため、6か月(20話)に延びたという。
「人気があれば出番も増えるし話も変わっていく。エネルギーのあふれる現場で最初に仕事ができたことは、本当によかったと思っています」
ドラマや映画の現場で感じた韓国と日本の最も大きな違いは、「すべてにおいて、監督の意向が優先される」ということだ。
「日本では、主演俳優のスケジュールに合わせて撮影の時間割が分単位で決められることがあるのですが、韓国は、『日没までにここまでのシーンを撮る』『日没後はこれを撮る』というように、大雑把なスケジュールがあるだけで、終了時間は決まっていません。
監督が演技に納得できるまで妥協せずに何度でもやり直すため先に進まず、撮影が中止になることもありますから、役者として、ものすごく鍛えられました。スター俳優よりも監督の方が偉いんです。
撮影スケジュールが直前までわからないので、ドラマのかけ持ちなんて絶対に無理。その分、役にどっぷり浸かって集中できますが、撮影中はほとんど家に帰れません(笑い)」