ブランドものの高級バッグや衣服などの違法コピー品は、現実には価値がないどころか、犯罪だと誰もが理解しているだろう。ところが、手軽に利用できるようになったネット通販やフリマサイト経由で、アパレルの違法コピー品が巷にあふれるようになってしまった。そして、フリマサイトなどで販売している“個人”は、手軽な副業だと思って委託された人たちだという。ライターの宮添優氏が、違法コピー品が日本で個人販売する人たちに託されるほど、偽物ビジネスとして広がっている様子を追った。
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千葉県内にある某倉庫の小部屋に、年齢や格好、そして人種まで違う複数の人々が次々に吸い込まれていく。外気温は35度近く、みな短パンにTシャツの軽装だが、この小部屋にずらりと並んでいたのは、モンクレールやタトラス、デュベティカといった世界中で人気の高級ダウンジャケットなど、今年の「秋冬新作」とされる品々だ。来場者らは、商品の写真を撮ったり、同行者とあれこれ話したり、一見するとここは「アパレル関係の展示会」であり、来場者は「バイヤー」にも見える。しかし、並んだ「新作」の中には、筆者がブランドのホームページや、大規模ファッションショーを確認しても「見つからない」デザインの商品もあった。この謎の「展示会」について、日本国内の貿易関連会社に勤務する・小島竜也さん(仮名・30代)がため息交じりに説明する。
「要はパチもんです、全部偽物。偽物の展示会を毎年やってるんです。新作はほとんどあるし、ここで注文すれば、数週間後には商品が納品される。中国人が中国経由で日本に持ち込み、それを日本国内の日本人や外国人が買う。買うのは一般客ではなく、いわゆる卸業者で、そこからいろんなルートを通じて販売されるんです」(小島さん)
我々がやっているのはあくまでもビジネス
ダウンジャケットなど正規品ならば数十万円はくだらない高額商品だけでなく、Tシャツやキャップなどのファッション小物まで、少なく見積もっても、それぞれ数十点から数百点は展示会に出ていたという。それらが本当に全部、偽物だというのか。会場から出てきたばかりの来場者を呼び止めると、まるで悪びれる様子もなく、こう答えた。
「あれ(偽物)でもいいというニーズがあるから、結局こういう(悪質な)業者も暗躍する。私は売れるなら何でも仕入れるし売る。もちろん、売るときは自分が逮捕されないようにやるし、そうでないと”ビジネス”として成立しません。我々がやっているのはあくまでもビジネスで、誰かを騙したい、金を奪いたいなんて感覚はありません」(偽物展示会の来場者男性)
偽物で商売している時点で、誰かを騙したいわけではないと言われても説得力がないが、やましいことをしている人にありがちな怯えた雰囲気や警戒眼が全くないのは驚きだ。とはいえ、これほどにまで堂々と「偽物」を展示・販売しているわけだから、どこからか情報が漏れたりして警察が乗り込んでくる恐れはないのか。その可能性についても、この男性は笑顔で否定する。