夏の高校野球・甲子園大会で慶應義塾高校(神奈川県)が注目を集めている。選手の髪型は高校野球に多い丸刈りではなく、短髪やツーブロックなど自由だ。神奈川県在住の作家の甘糟りり子さんも慶應を応援する一人。甘糟さんが、丸刈り強制など“古い野球体質”への見解を綴る。
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夏の高校野球・甲子園大会ではいつも地元の神奈川県代表を応援している。今年はもちろん慶應義塾高校にテレビの前で声援を送っている。理由は地元だけでなく、「髪型自由」「長時間練習しない」「エンジョイ・ベースボール」というスタイルに大いに共感したから。監督の森林貴彦さんは、選手たちに「監督」ではなく「森林さん」と呼ばせているそうだ。県庁所在地のある横浜は港町。風通しのいい、肩の力が抜けた雰囲気が我が神奈川県らしいと私は思っている。
ご存知の通り、神奈川県の高校野球の予選は激戦区だ。横浜高校や東海大相模、桐蔭、桐光、それに法政二高やY校(横浜商業)などの強豪校がずらりと揃っている。参加校の数は2番目(今年は167校、1位は愛知の173校。ちなみに一番少ないのは鳥取と高知の23校)。東京のように東と西に分ければいいのにとも思うけれど、強豪校のほとんどは東に集中しているので、それもまた不公平になってしまうかもしれない。
そして、神奈川の場合、横浜高校の松坂大輔がそうだったように、他県から甲子園のために有力選手が入学してくる野球校が少なくない。というか、代表になるのはほとんどが野球校のはず。私の住む鎌倉には鎌倉学園という野球が強い男子校があって、県予選ではいいところまでいくのだが、なかなかこの激戦区を制して甲子園に行くまでは辿り着けていない。そんな中、“非野球校”で坊主頭ではない慶應高校が代表を勝ち取ったのはすごいなあと思うし、痛快でもある。
慶應高校は坊主を禁止しているわけではない。ボールが見えなくなるほどの前髪や、投げると帽子が落ちてしまうほどの長髪は禁止だが、あくまでも選手の自主性に任せている。坊主にしたい人はしてもいい、ということらしい。中継を見る限りでは、みんなほどよい長さの髪型をしていた。街を歩く若者だとしたら、ごく普通の髪型である。それが高校野球というフィールドになると異端になってしまうのは時代錯誤としか思えない。サッカーにしてもバスケにしても陸上にしても、みんな揃って坊主頭なんてスポーツは他にないのではないだろうか。