結成16年以上の漫才師による漫才賞レース「THE SECOND~漫才トーナメント~」は芸人やお笑いファンの間で大きな盛り上がりを見せた。中でも優勝したギャロップと、結成19年の囲碁将棋が戦った準決勝は、観客審査の得票が同点で“事実上の決勝”とも評された。惜しくも敗れた囲碁将棋の2人が、ベスト4漫才師への連続インタビューに応えた。(聞き手/中村計=ノンフィクションライター、『笑い神 M-1、その純情と狂気』著者)【前後編の前編。後編を読む】
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──文田さんはTHE SECONDに臨むにあたって「とにかく次の大会につなげたい」と話していましたが、そういう意味では、これ以上ない結果になりましたよね。放送後、こんなに評判がよかった賞レースってなかなかないじゃないですか。
文田大介:スタッフたちの熱量がすごかったですからね。実は、僕らは決勝に残ったら「セコムしてますか?」というセリフを連発するネタをやる予定だったんです。ただ、あの番組のスポンサーにALSOKがついていて。
──各組とも決勝に残ることを想定して3本ぶん、事前にネタの台本を制作サイドに提出していたんですよね。
文田:そうなんです。ただ、僕らは、全部のネタを台本に起こすのが大変だったので代わりに動画を提出しました。その上で、本番ではこんなボケを足す予定ですっていうメモ書きも添えて。僕は最初、コンプラ(イアンス)チェックのための台本提出だと思っていたんです。最近のテレビはコンプラに厳しいので、危ないワードがあったら事前に言われるんだろうな、と。でも、そんなのは1つもなくて。後から聞いたら、ALSOKの人に許可を取っといてくれたそうなんです。「セコムしてますか?」というセリフがあるのですが、どうかご容赦ください、と。
──そんなこと、してくれるものなんですね。テレビの世界って、もっとビジネスライクというか、そういうことに関してはお役所的な対応をするものなのかと思っていました。スポンサーは絶対で、ダメなものはダメなんだ、と。
文田:M-1のスタッフもその点は、熱かったですよ。ある大会で、ファミマがスポンサーについていたので「ファミマ以外のコンビニの名前は出さないでください」って書いた紙が控え室に張り出してあったんです。そうしたら、後からスタッフが入ってきて「交渉してきたので、ファミマ以外のコンビニ名も出していいです!」って。コンビニの名前を言うコンビがそんなにいるわけじゃないんですけど、そこまでしてくれるというのは芸人からしたら嬉しいじゃないですか。
──お笑いの賞レースが成功するか否かは、芸人に「この制作スタッフの前では手を抜けない、嘘はつけない」って思わせるかどうかですもんね。
文田:スタッフの熱が芸人に伝播しますよね。ただ、そのことを僕らがラジオでしゃべったら、フジテレビのスタッフに、僕らのがんばりを褒めてもらえるのは嬉しいんですけど、他の番組との兼ね合いもあるので、あんまり言わないでくれると助かります、って言われちゃいました。つまり、どのネタ番組でも、そこまでしてくれるわけではないので、それが当たり前と思われると、ちょっと具合が悪いのかもしれません。