鼻づまりが酷くて、なんだか頭が重い。においもわからなくなってきた──その症状を放置すると、命の危険があるかもしれない。ひっそりと鼻からやってくる重病、その前兆と対策を専門家に聞いた。
目の奥が痛い
お笑いタレントの有吉弘行が8月13日、「慢性副鼻腔炎」の手術を受けたことをラジオ番組で明かした。鼻水が詰まって化膿し、「おでこのあたりまで溜まっていた」という。2月にも同じく慢性副鼻腔炎を患う岸田文雄首相が鼻づまりを取り除く手術を受けていた。
副鼻腔は鼻腔の周囲にある空洞で、吸気を温める働きがある。その粘膜が炎症を起こした状態が副鼻腔炎だ。
よし耳鼻咽喉科院長の山中弘明氏が語る。
「最も多いのは風邪をこじらせて副鼻腔炎になるパターンです。ウイルス感染して副鼻腔の粘膜が弱り、そこに細菌が入り込んで悪さをする。アレルギー性鼻炎の悪化、歯から入り込んだ細菌、カビなどが原因で感染するケースもあります。発症した初期段階を『急性副鼻腔炎』、症状が3か月以上続くと『慢性副鼻腔炎』と診断されるのが一般的です」
国内で100万~200万人ほどが副鼻腔炎を罹患していると推測される。山中氏によれば、副鼻腔炎の症状には次の特徴がある。
「粘り気が強くて黄色や緑の鼻水が出ます。ちゃんと鼻をかんでいるのに奥のほうが詰まっている感じがする、鼻水がのどに垂れてくるといった特徴もある。普通の風邪なら1週間もすれば治るので、それ以上続くようなら副鼻腔炎を疑ったほうがよいでしょう」
さらに「顔が痛い」のも主な症状のひとつだという。
「具体的には、頭、おでこ、頬、目の奥、歯などが痛くなります。副鼻腔内部のどこで炎症が起きているかによって痛む場所が変わる。副鼻腔に膿が溜まると鼻水が臭いと感じるようになるし、鼻の粘膜が腫れることで嗅覚障害も起こります。不眠症になるケースや、うつ病リスクが上がるという研究もある」(山中氏)
ただの鼻づまりだと軽視して症状を放置するのは極めて危険だ。
「骨を通して脳まで感染が広がり、脳の周りを覆う髄膜が炎症を起こす『髄膜炎』、脳のなかに膿がたまる『脳膿瘍』など、命に関わる重篤な合併症を引き起こす可能性がある。感染が目に広がれば、視力低下を招いたり、最悪の場合は失明するケースもありえます。感染が皮膚組織に広がれば『蜂窩織炎』を引き起こし、顔が赤く腫れ上がってしまう」(山中氏)