107年ぶりのV(時事通信フォト)

107年ぶりのV(時事通信フォト)

尊敬する「父の背中」

 父親が有名人といえば清原和博の次男・清原勝児。出場がなかった日も、取材には嫌な顔ひとつみせず丁寧に応じていた。勝児と幼稚舎、普通部(中学校)で同級生だったのが福井直睦だ。父は著名なグラフィックデザイナーだという福井が守る三塁は、今春まで勝児が守ったポジションであり、結果として親友のポジションを奪った形だ。決勝の9回表には福井に代わって勝児が打席に入った。福井が振り返る。

「夢みたいな時間が続いていたんですけど、決勝という舞台で、12年来の友達が自分の代わりに打席に入るのは最高に嬉しかったです。勝児の苦労も見てきたので」

 アルプス席から仲間、そして父の勇姿を見守ったのが監督の息子でもある森林賢人だ。

「たまに試合で活躍すると、自宅で父は褒めてくれた。最後の夏にベンチに入れなかったですけど、父の判断に対して母がとやかく言うことはありませんでした(笑)。父は裏表がなく、グラウンドと家での表情は変わりません。小学校の教員を務め、それ以外の時間は常に野球のことを考えている。尊敬しています」

 やはり旋風を巻き起こす学校は、日替わりでヒーローが誕生する。

【プロフィール】
柳川悠二(やながわ・ゆうじ)/ノンフィクションライター。1976年、宮崎県生まれ。法政大学在学中からスポーツ取材を開始し、主にスポーツ総合誌、週刊誌に寄稿。2016年に『永遠のPL学園』で第23回小学館ノンフィクション大賞を受賞。近著に『甲子園と令和の怪物』(小学館新書)

※週刊ポスト2023年9月8日号

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