クロスシートからロングシートへと自動で転換(撮影:小川裕夫)

クロスシートからロングシートへと自動で転換(撮影:小川裕夫)

 クロスシートは移動中に座わることができても、隣の乗客を気にしてサンドイッチやおにぎりを食べることを躊躇してしまう人も少なくない。パソコンで作業をしたり、新聞を読んだりといった作業もしづらい。また、列車移動中に少しでも身体を休めたい、寝たいというリクエストもある。そうした乗客のリクエストを満たすには、ロングシートよりクロスシートの方が適している。

 大阪圏は、私鉄とJRの競争が激しい。そのため、各社は競うように豪華なクロスシート車を導入してきた。そして、大阪圏では豪華で快適な座席でも運賃のみで乗車できるのが当たり前だった。

 ところが東京圏は、大阪圏ほど私鉄とJRの競争が激しくない。また、通勤ラッシュの混雑が激しいので、クロスシート車を導入する余裕はなかった。

ロングとクロスに転換できるデュアルシート

 しかし、2008年に東武鉄道が東上線で有料座席指定列車の「TJライナー」の運行を開始すると、有料座席指定を取り巻く環境や鉄道事業者の意識にも変化が生じる。TJライナーに使用される車両はデュアルシートと呼ばれる座席が配置された。デュアルシートとは、通常の運行時ではロングシート、有料座席指定列車として運行する際にはクロスシートへと転換される座席のことだ。

 デュアルシートの車両は、当然ながら通常の車両よりも車両製造コストが高くなる。しかし、TJライナーは座って帰りたいというビジネスマンからの支持も強く、好評を博した。

 東武のTJライナーが好評だったことから、2017年に西武鉄道が東京メトロ・東急電鉄・横浜高速鉄道(みなとみらい線)の4社間で「S-TRAIN」の運行を開始。S-TRAINはデュアルシートを組み込んだ40000系で運行され、S-TRAINとしての運行時のみクロスシート、通常時はロングシートで運行される。

 TJライナー同様に、S-TRAINも座って移動したいという需要に応えて好評を博した。そのため、西武は2018年から新宿線から拝島線へと直通する拝島ライナーの運行を開始。拝島ライナーにもデュアルシートを組み込んだ40000系が使用されている。

 東武・西武が運行する有料座席指定列車が好評を得ると、他社も追随。京王電鉄は2018年2月からデュアルシート車の2代目5000形を登場させ、「京王ライナー」として運行を開始。2020年6月には、東武と東京メトロが有料座席指定列車「THライナー」の運行を共同で開始している。

関連記事

トピックス

秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《24歳の誕生日写真公開》愛子さま、ラオス訪問の準備進めるお姿 ハイネックにVネックを合わせて顔まわりをすっきりした印象に
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン
韓国・漢拏山国立公園を訪れいてた中黒人観光客のマナーに批判が殺到した(漢拏山国立公園のHPより)
《スタバで焼酎&チキンも物議》中国人観光客が韓国の世界遺産で排泄行為…“衝撃の写真”が拡散 専門家は衛生文化の影響を指摘「IKEAのゴミ箱でする姿も見ました」
NEWSポストセブン
 チャリティー上映会に天皇皇后両陛下の長女・愛子さまが出席された(2025年11月27日、撮影/JMPA)
《板垣李光人と同級生トークも》愛子さま、アニメ映画『ペリリュー』上映会に グレーのセットアップでメンズライクコーデで魅せた
NEWSポストセブン
リ・グァンホ容疑者
《拷問動画で主犯格逮捕》“闇バイト”をした韓国の大学生が拷問でショック死「電気ショックや殴打」「全身がアザだらけで真っ黒に」…リ・グァンホ容疑者の“壮絶犯罪手口”
NEWSポストセブン
渡邊渚アナのエッセイ連載『ひたむきに咲く』
「世界から『日本は男性の性欲に甘い国』と言われている」 渡邊渚さんが「日本で多発する性的搾取」について思うこと
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
《顔を伏せて恥ずかしそうに…》“コーチの股間タッチ”報道で謝罪の都玲華(21)、「サバい〜」SNSに投稿していた親密ショット…「両親を悲しませることはできない」原点に立ち返る“親子二人三脚の日々”
NEWSポストセブン
ガーリーなファッションに注目が集まっている秋篠宮妃の紀子さま(時事通信フォト)
《ただの女性アナファッションではない》紀子さま「アラ還でもハート柄」の“技あり”ガーリースーツの着こなし、若き日は“ナマズの婚約指輪”のオーダーしたオシャレ上級者
NEWSポストセブン
世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン