「7月28日に釧路町でヒグマの目撃情報があり役場が警戒に当たっていたところ、30日に再び現われた。ハンターを見ても逃げようとしなかったため、危険と判断し駆除を決断したそうです。クマは他の個体と戦ったのか、顔に大きな傷を負い衰弱していたという。その弱々しい姿から、ハンターは駆除したクマがOSO18だと気付かなかったといいます」(後藤氏)
OSO18は駆除後に解体、冷凍保存された。肉の一部は道内のジビエ業者の手にわたり、その後、都内の飲食店で熊肉として提供されたという。8月に行なわれたDNA鑑定でその正体が判明したわけだが、4年にわたり地元住民を恐怖に陥れたモンスターの最期は、あまりにあっけないものだった。
かつて道内のヒグマは減少を続け、1990年には5200頭を数えるほどだった。だが、同年に冬眠中や冬眠明けのクマを狙った「春グマ駆除」が廃止されると個体数は増加の一途をたどり、2020年度は1万1700頭に倍増した。近年はエサを求め人里に下りてくるケースが急増。市街地を徘徊し人を襲う事例も発生している。
ハンターの高齢化が進み、動物愛護の観点から駆除に厳しい目が向けられる時代、前出の後藤氏は警鐘を鳴らす。
「ひとまず決着がつき安堵しましたが、この地域にはヤツより凶暴で大きな若いクマや、DNAを受け継いだ子供がいるかもしれない。4~5年前に人を襲ったクマも未だ捕獲されておらず、油断はできません。OSO18騒動は、クマが人里に近づいていることを再認識するきっかけになったはずです」
野生動物との「距離感」を見誤ってはいけない。
※週刊ポスト2023年9月8日号