中国からの迷惑電話が、日本各地を困惑させている。東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出が始まってから、中国のSNSでは日本の電話番号が次々に書き込まれ、それを見たネットユーザーが嫌がらせやいたずら半分で電話をかけているのだ。
松野博一官房長官はこうした事態に会見で「極めて遺憾」と表明し、内堀雅雄・福島県知事は政府に対し早期の沈静化を要請したが、迷惑電話は福島県内外問わず鳴りつづけている。福島県内の飲食店経営者はこう話す。
「着信履歴は(中国の国番号の)『86』からの番号がズラリと並んでいます……。出ると、機械で翻訳したと思われる合成音声で『海を汚すな』『お前が核の水を飲め』といったようなことを言っていることもあります。
『バガヤロ!』と言ったあとで、中国語でまくしたてられたこともありました。中国語で何を言っているかわかりませんが、とにかく怒っているようでした」
最初は番号を登録して着信拒否をしようかと思ったが、次々に違う番号からかかってくるため、対応に苦慮しているという。
「着信音を消そうかとも考えましたが、予約を受け付けられなくなってしまうのでそれもできません。仕方ないから、『86』からの電話は出てすぐ切るようにしましたが、またすぐにかかってきたりして、仕事になりません」
各種報道によると、東京・浅草のラーメン店には1000件以上かかってきたほか、埼玉県のラーメン店には「汚染水でラーメンを作ってくれ」という電話があったという。福島県内では、役所のほか病院や薬局、旅館、バーなど場所や業種を問わず多くの迷惑電話がかかってきている。東京・千代田区役所や中野区役所、さらには警視庁東京湾岸署にもそれぞれ1000件以上の迷惑電話がかかってきていることが報じられている。
福島第一原発沖では、処理水の放出をしてから獲れた魚のトリチウム濃度を検査しているが、8月28日までに3日連続で「検出限界以下」だった。中国では、科学的ではないかたちで反日感情が沸き起こり、日本への嫌がらせ電話につながっているのだ。
2012年には、日本政府が尖閣諸島を国有化したことに抗議する反日デモが中国各地で広がり、日系の自動車販売店やパナソニックの工場、ジャスコといった日系スーパーなどが襲撃されてめちゃくちゃに破壊された。今回の処理水をめぐっても、同様の事態に発展しかねないことが懸念される。