近頃、目のかすみやぼやけが気になる──目の不調は多くの人が経験するものだが、対処を誤ると白内障や緑内障といった大きな病気につながり、最悪のケースでは失明しかねない。
特に避けるべきは自己流の老眼対策で、最悪の結果を招きかねない。市販の目薬は、大量に使うと失明のリスクにもつながるという。二本松眼科病院副院長の平松類医師が指摘する。
「市販薬には注意が必要です。市販の目薬で一時的にかすみ目などの症状が軽くなる場合がありますが、それに頼って大量に使うようになると目の不調を招く可能性があります。特に細菌の繁殖を防ぐ防腐剤が入っていると要注意です。防腐剤は角膜を傷つけて感染症のリスクを上げるので、長期にわたってたくさん使うと目を傷つけてしまい、最悪のケースでは失明することもあるのです」(平松医師、以下「 」内同)
気持ちがいいからと自己流のマッサージを施すことも、やり方によっては取り返しがつかないほど目を傷めてしまう。
「目の周りや眼球などを押すマッサージが一部で流行しましたが、大変危険でこれにより眼圧が上がるリスクがあります。また、眼球に強い圧力をかけると白内障や緑内障、網膜剥離の危険性があるだけでなく、目の動脈を止めることで下手をすると心臓への血流が滞るケースもあるので非常に危険です」
それでは、近年注目を集める「外科手術で老眼を治す」というアプローチはどうか。
「手術で水晶体を取り除いて多焦点眼内レンズを挿入すると、手元と遠くが両方同時によく見えるようになります。ただし、それにより目や脳が疲れたり極度のまぶしさを感じたり、目の見え方に違和感が残る場合がある。感染症のリスクなどもあるため、術後のQOL(生活の質)を考えて慎重に選択する必要があります。
今では手術を受けずに済み、合わなければやめればいい『老眼用コンタクトレンズ』という選択肢もあります」
ただし、老眼用コンタクトレンズも多焦点眼内レンズと同じく遠近の両方が同時に見えるため、目や脳に疲労を感じることがあるという。違和感や不安を率直に相談できる専門医と治療を進めることが肝要だ。
※週刊ポスト2023年9月8日号