江戸時代初期、オランダの商船が北海道東南部の港に現れた。海辺の集落のアイヌは、はるばるヨーロッパから海を渡ってきた船員に、地元の海で獲れる牡蠣を贈り物として届け、友好的な関係を築いたという。北海道厚岸町はそれから約400年経った現在でも、国内有数の出荷量を誇る牡蠣の名産地だ。日本の海の恵みは、古くから地域の食と文化を支え、世界との接点でもあった。それがいま、心ない風評被害によって苦しめられている──。
天皇皇后両陛下は9月16日から1泊2日の予定で、「全国豊かな海づくり大会」の今年の開催地である厚岸町を訪問される。
「日本の漁業の振興と発展を目的とした海づくり大会は、両陛下の四大行幸啓の1つに数えられる重要な公務です。
両陛下のご出席は御代がわりから4度目ですが、初回の秋田大会では台風の影響で肝心の魚の放流行事ができず、翌年はコロナ禍のため開催すら叶いませんでした。昨年の兵庫大会から現地に足を運んでいただくことができましたが、参加人数を制限するなど対策を施しての開催。今回、ようやくマスクを外して存分に海づくり大会を経験いただけることになります」(宮内庁関係者)
両陛下にとって北海道は、ご結婚の翌年に知床半島の名峰・羅臼岳での登山を楽しまれた思い出の地でもある。当日案内人を務めた公益財団法人「知床財団」の村田良介理事長が言う。
「雅子さまは健脚の陛下に遅れることなくついていかれ、さまざまな質問をされたり、花や景色の写真を撮影されたりと大自然を満喫されていました。頂上では写真撮影のためにガスが晴れるのを待つ時間があったのですが、雅子さまが周囲に自らチョコレートを配られ、そのお気遣いが印象的でした」
このところ、インドネシアへのご訪問をこなされるなど雅子さまのご体調は安定傾向にあるものの、無理は禁物だ。
「北海道は移動距離も長く、本来であれば2?3泊の滞在をいただきたいところですが、1泊2日という日程は、“令和カラー”です」(前出・宮内庁関係者)
そんな北海道ご訪問を間近に控えた8月24日、国際社会が注目する大きな出来事があった。東日本大震災以降、ずっと福島第一原発の敷地内に保管されていた処理水の海洋放出が始まったのだ。
「処理水に含まれる放射性物質の数値は国際機関が示す基準値を大幅に下回っており、政府や東京電力は安全性を強調しています。しかし、非科学的な風評の被害が広がり、地元のみならず、日本中の漁業関係者が不安や困惑を隠しきれないのが実態です」(福島の漁業関係者)