1962年の創業以来、同族経営を貫いたジャニーズ事務所で史上初のタレント社長が経営トップに就く。新体制で、組織の中心を担うのも事務所のDNAを受け継ぐ所属タレントたちだ。ジャニー喜多川前社長の性加害問題と真摯に向き合い、新しいエンタメの可能性を模索する精鋭チームの全貌とは──。
9月2日の昼下がり、都内のボクシングジムで東山紀之(56才)が一心不乱にトレーニングに励んでいた。
10年以上前にボクシングを始めて以来、週に数度のジム通いは欠かせないルーティンだ。東山はボクシングを通じて芝居の間合いや呼吸の合わせ方を学び、トレーニングの時間は日頃のプレッシャーから解き放たれる「息抜き」でもあるという。リングの上で汗だくになる東山。このとき、彼の胸中には何が去来していたのだろうか──。
8月29日、ジャニーズ事務所が設置した「外部専門家による再発防止特別チーム」が調査結果報告書に関する会見を行った。そこで明らかにされたのはジャニー喜多川前社長(享年87)が1950年代から2010年代半ばにわたって性加害を行ってきたことの事実認定であり、再発防止策として提言されたのは「藤島ジュリー景子社長(57才)の辞任」だった。調査結果を受けてジャニーズ事務所は9月7日に会見を行った。
「今年3月に英BBCがジャニーさんの性加害問題を追及し、元所属タレントによる実名告発が相次ぐと、ジャニーズ事務所は厳しい批判にさらされました。ジュリーさんはジャニーさんの性加害を『知らなかった』と釈明したが、急場しのぎの説明と捉えられ、状況は一層悪化したのです」(テレビ局関係者)
ジュリー氏はこの時点で、すでに社長の座を降りる意向を固めていたという。
ジャニー氏がジャニーズ事務所を創業したのは1962年。以来、長年にわたって同族経営を続けてきたオーナー企業において後任選びは難航を極めた。
「当初は外部からプロ経営者を招聘する案もあったが、何人かに断られたそうです。ジャニーさんの性加害問題は日本のみならず世界各国で報じられ、外部の企業が介入するにはリスクが大きすぎる。米国や韓国の芸能事務所から会社を買いたいという打診もあったそうですが、ジュリーさんにその選択肢はなかった。外資に売れば、これまでにジャニーズが培ってきたエンタメの文化が消え、Jr.や所属タレントがバラバラになってしまう恐れがあるからです」(前出・テレビ局関係者)
いまいる所属タレントを守るためにも、新社長はジャニーズのDNAを受け継ぐ人物でなければならない。候補として真っ先に名前があがったのは所属タレントの中でも最年長で“ジャニーズの長男”と呼ばれる東山だった。
ボクシングで汗を流した翌日の朝、東山はキャスターを務める報道番組『サンデーLIVE!!』(テレビ朝日系)に生出演したが、「今日の段階ではこれ以上のコメントを控えさせていただきます」と語るにとどまった。
キャスターとしては口をつぐんだ東山だが、実は水面下では行動に移っていた。再発防止特別チームの会見が行われたあと、後輩たちと個別で話し合う機会を設けたという。
「木村拓哉さん(50才)とも会食し、お互いに腹を割って話すことができたといいます。ジャニーズの社長に就くことには大きな責任が伴い、批判の矢面に立つ覚悟が必要です。何より、所属タレントたちの同意を得ることが先決。すでに退所の意向を示しているタレントが複数いるそうで、慎重な根回しが行われていたとみられています」(前出・テレビ局関係者)