日本で唯一、鉄道が走っていない都道府県と言われていた沖縄県にモノレール「ゆいレール」が開通して20年が経った。県外からの観光客には空港と市街地を結ぶためだけのように思われていた路線だったが、現在では通勤や通学、生活路線として存在感を増している。ライターの小川裕夫氏が、利用者増に対応し、新規路線計画も現実味を帯びてきた沖縄の鉄道事情についてレポートする。
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新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、多くの鉄道路線が苦境に喘いでいる。特に、沿線人口の減少に歯止めがかからないローカル線は、存廃議論が喧しくなっている。東京圏・大阪圏といった大都市圏を除けば、これまでのような路線の維持は厳しい。そうした中、非大都市圏ながらもいまだ鉄道需要を伸ばしているのが沖縄県だ。
戦前期、沖縄県には鉄道が走っていたが、激しい沖縄戦によって壊滅。戦後復興のひとつとして、鉄道が再建されることはなかった。
「ゆいレール」は2両編成から3両編成に
沖縄に鉄道計画が浮上するのは、沖縄返還の現実味が帯びてきた1970年代に入ってからだ。1972年に沖縄が返還されると、県庁所在地である那覇を中心としたモノレール計画が本格化。しかし、計画は長らく実現せず、21世紀を迎える。
近年、新幹線などの高速鉄道の需要は堅調なものの、在来線は東京圏・大阪圏といった大都市圏でのみ存在感を発揮し、地方都市では縮小している。
日本全体としては鉄道を縮小する傾向にも関わらず、沖縄県は2003年に念願だった鉄道がようやく開業。その沖縄都市モノレール(ゆいレール)は、今年に開業20年を迎えた。
沖縄県も少子高齢化が押し寄せているが、ほかの地方都市のように鉄道需要が減退する兆しはない。それどころか、ゆいレールの利用者は歳月を経るごとに増えていった。コロナ禍で一時的に減少したものの、その後は順調に客足が戻ってきている。
「ゆいレールは2両編成で運行されてきましたが、利用者が多いことから3両編成へと順次切り替えています。3両編成化にあたっては車両を増やさなければならないことは当然ですが、ホームの延長工事やホームドアの設置といった工事も発生します。本来ならホームの延長工事には時間がかかりますが、ゆいレールのホームは建設時から3両編成に対応できる構造で造られていました。そのため、長編成化に対応する工事は短期間で済んでいます」と話すのは沖縄県土木建築部都市計画・モノレール課の担当者だ。