9月7日にジャニーズ事務所が開いた、ジャニー喜多川氏による性加害問題の記者会見以降、同事務所の経営方針をめぐって様々な議論が続いている。なかでも最大の課題は、被害者に対する賠償をどうするかという問題だ。いったい総額いくらになるのか、どのように支払うのか、果たして支払い能力はあるのか……問題は山積している。
被害内容にかかわらず一律?
ジャニーズ事務所は9月13日、「被害補償及び再発防止策」について発表した。今後、金銭的な賠償について具体的な話し合いが進められていくとみられるが、注目すべきは、9月7日の会見で東山紀之・新社長が述べた「法の枠を超えて補償」という発言だ。
性犯罪被害者の支援に取り組んでいる上谷さくら弁護士はこう解釈する。
「刑事・民事裁判にせず、被害者に十分な賠償をして、示談にしようとしているのではないか」
被害者側にとって、示談にしたほうがメリットが大きいという。
「民事裁判を起こす意向の方もいるようですが、裁判になると加害者の行為を精査・認定する必要があり、立証が大変で、賠償額も請求額よりかなり低く抑えられがちです。また、被害者間で賠償額に差が出ると、被害者間の分断を生む恐れもあります。さらに、民事訴訟は金額を決める手続きなので、基本的に事務所とじっくり話して気持ちを聞いてもらうような場はなく、被害者にとっては徒労感だけが募ることになりかねません」(同前)
東山氏の「法の枠を超えて」という言葉は、別の解釈もできるという。
「『外部専門家による再発防止特別チーム』の調査報告書には、ジャニー氏の性加害は1950年代から始まったと書かれ、法的には時効を迎えているケースが多い。時効だからと切り捨てれば、被害者は納得しないでしょうし、再発防止特別チームも『時効が成立している者についても救済措置の対象とすべき』と提言している。それに応える意味で、時効に制限される裁判にはしないということでしょう」(同前)
では、賠償金の支払い方はどうなるのだろうか。
「被害者救済委員会が被害者から自己申告を受け付けて、ヒアリングを行ない、被害内容を審査した上でジャニーズ事務所が支払う形にするのが良いでしょう。性被害による心身のダメージは大きいので、被害申告に時間がかかる人は相当数いると思われます。そのため、被害者認定は期限を設けず、10年後、20年後でも被害申告を受け付ける体制を構築すべきだと思います」(同前)