リーチマイケルをもう一度奮い立たせたのは、郷土愛と不屈の闘争心だった(写真/AFLO)

リーチマイケルをもう一度奮い立たせたのは、郷土愛と不屈の闘争心だった(写真/AFLO)

 だが、W杯後、日本代表として献身的なプレーを続けるなかで、彼の体は悲鳴を上げていた。とりわけ股関節の痛みは壮絶で、一時はスクワットすらできなかったという。

 コロナ禍でリーグが中断していた2020年3月、北九州の名医の元を訪れ、左右の股関節と両足首、両耳の手術に踏み切った。

「“頑張って”と背中を押してくれた娘さんのために前線復帰を目指したそう。1年間かけて全身6か所を手術しました。苦しいリハビリを乗り越え、2021年にようやく本来のパフォーマンスが戻ってきたといいます」(同前)

自らネタになる

 術後は初心に戻り、一から体作りを見直した。

「“怪我をしない体を作る”という原点に立ち返り、食事の量も増やした。炊飯器の釜ごと白米を食べていた時期もあったといいます。また、普段は朝練前に体の準備を整えるリハビリがあるのですが、どのメンバーよりも早く出てきて古傷が痛まないよう入念なケアをするようになった」(同前)

 再び代表の仲間と共にプレーしたい──そんな思いも強かったようだ。リーチと一緒にプレーした経験のあるラグビー関係者が語る。

「自分はチームの歯車でいいという、まさにワンフォアオールの精神の持ち主です。彼自身はシャイなんだけど、チームの円滑なコミュニケーションのためなら自分がネタになることも厭わない。実際、リーチを中心に『ハゲの会』というのができて、頭髪の薄いメンバーが集まって居酒屋で飲むこともあった。仲間との深い絆が、リーチを再び第一線に立たせる原動力になったのだと思います」

 今大会でリーチからキャプテンを引き継いだ姫野和樹(29)は2年前、リーチに「なぜそんなに代表にモチベーションがあるんですか?」と尋ねると、こう答えたという。

「俺は日本を強くしたい。ただそれだけだ」

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