国内

工藤会の市民襲撃事件では実行犯全員がトップの指示について黙秘 逮捕されてもヤクザが絶対にしゃべらない理由

指定暴力団工藤会会長宅の捜索を終えた捜査員ら。2010年4月、福岡・北九州市(時事通信フォト)

指定暴力団工藤会会長宅の捜索を終えた捜査員ら。2010年4月、福岡・北九州市(時事通信フォト)

 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、極刑を言い渡した1審判決から約2年、北九州市の特定危険指定暴力団「工藤会」の総裁・野村悟被告(76才)、ナンバー2・田上不美夫被告(67才)の控訴審から分かるヤクザの裁判の特殊性と影響について。

 * * *
「あんた生涯、このこと後悔するよ」と第一審の判決公判で、足立勉裁判長に向かってそう発言した特定危険指定暴力団・工藤会総裁、野村悟被告らの控訴審が、13日から福岡高裁で始まった。

 前出の発言が野村被告から出たのは、2021年8月24日、裁判長によって死刑判決が言い渡された時だ。無罪を主張していた野村被告は「公正な判断をお願いしたんだけど、全部推認、推認。こんな裁判あるんか」と強い口調で言い、「生涯、後悔する」と威嚇した。同じく無罪を主張していた工藤会ナンバー2で会長の田上不美夫被告は、無期懲役を言い渡され「ひどいな、あんた、足立さん」と言葉をぶつけた。

 この裁判で対象とされたのは、工藤会組員が市民を襲撃した4つの事件だ。1998年2月に北九州で起きた漁協元組合長の男性を射殺した事件、2012年4月に北九州で起きた元福岡県警警部を狙った銃撃事件、2013年1月に福岡市で起きた女性看護師の刺傷事件、そして2014年5月、北九州市で起きた漁協元組合長の孫の男性歯科医師刺傷事件である。どれも実行犯として組員が逮捕されていたが、トップからの指示については全員が黙秘を貫いていた。

 北九州を「修羅の国」と化した工藤会は、特に危険な団体であるとして、日本で唯一、特定危険指定と認定されている。それだけに統制は厳しく、絶対的な上下関係は、他の組織よりも強固だったといわれる。

「ヤクザが逮捕されれば、有罪判決を受けるのはほぼ確実。組員の誰かがしゃべったとわかれば、周りに蔑まれるだけでなく、ムショでもどこでも、いつどんな制裁を受けるかわからないという不安と恐怖の中で生きてくことになる。しゃべるわけがない」と、ある暴力団を抜けた元組員はいう。口を割らないのは組織や組織のトップを守るだけでなく、自分の身を守る術でもある。

「ただ」と前置きして元組員はこうもいう。「組を抜ければ、縛りはなくなるかといえばそうではない。普通の企業だって、辞めた社員に秘密保持誓約書にサインさせるだろう。あれと同じだ。ヤクザ一般、他の組のことならしゃべれるが、組内のことは話せない。まして事件については口にはしない。密売や特殊詐欺でも古くなったやり方や、他の組の案件なら話せるが、自分がいた組が関わる案件や進行中の仕組みについては話せない」。

関連キーワード

関連記事

トピックス

趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
事業仕分けで蓮舫行政刷新担当大臣(当時)と親しげに会話する玉木氏(2010年10月撮影:小川裕夫)
《キョロ充からリア充へ?》玉木雄一郎代表、国民民主党躍進の背景に「なぜか目立つところにいる天性の才能」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
米利休氏とじいちゃん(米利休氏が立ち上げたブランド「利休宝園」サイトより)
「続ければ続けるほど赤字」とわかっていても“1998年生まれ東大卒”が“じいちゃんの赤字米農家”を継いだワケ《深刻な後継者不足問題》
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン
連日お泊まりが報じられた赤西仁と広瀬アリス
《広瀬アリスと交際発覚》赤西仁の隠さないデートに“今は彼に夢中” 交際後にカップルで匂わせ投稿か
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《離婚するかも…と田中圭は憔悴した様子》永野芽郁との不倫疑惑に元タレント妻は“もう限界”で堪忍袋の緒が切れた
NEWSポストセブン