高齢になって気になるのが、背中や腰の「曲がり」。これは「老人性円背」「後弯症」と呼ばれる症状で、加齢による筋力の低下や関節軟骨のすり減り、長年の姿勢のクセとなっている猫背などが原因とされる。どうやリハビリ整形外科院長の銅冶英雄医師が言う。
「円背も後弯症も背骨が丸まっている同じ変形を指しています。骨と骨の間の椎間板がズレて椎間板が潰れることで生じる背骨の曲がりはいきなり発症するのではなく、長年の猫背姿勢や中腰での仕事や家事、荷物の上げ下ろしなどを積み重ねることで背骨の変形を引き起こしていきます。レントゲン上では40代頃から椎間板の潰れが認められることがあります」(以下、「 」内は銅冶医師)
そうして丸まった背中や腰は見た目の問題だけでなく、老後の生活を蝕む原因になる。
「背骨の変形を放置すると将来的には痛みを引き起こしやすくなります。腰痛を放っておくと、ヘルニアなどを発症し、足の痺れや痛みに繋がります。また、重い荷物を持ち上げる姿勢は椎間板への負担が大きいため、突然ヘルニアになることも。そうした“トリガー”によって椎間板の潰れが進んでしまうこともあります。そうなると長年、痛みと付き合うことになる」
腰痛やヘルニアを発症した場合の治療は、痛み止めや湿布による対症療法がメイン。曲がってしまった背骨をまっすぐにするには手術をするしかないが、金属のロッドを使うため背骨が動かなくなり、「まっすぐに立つことはできても物を取ったりする動作などは非常に不便になる」という。
腰や背中が曲がってしまうことなく、いつまでも姿勢よく過ごすにはどうすればいいか。
腰を前に突き出す動き
一番の予防になるのが「正しい姿勢」を意識することだという。そう聞くと当たり前のように思えるが、身体の筋力が知らず知らずのうちに弱っていると、実践するのは意外と難しい。そこで、姿勢を正すために意識するポイントを銅冶医師監修のもと図解した(図参照)。
「猫背姿勢がクセになって椎間板がズレる人が多いので、逆方向にそらす動きを定期的に行なう『壁反らし体操』を推奨しています。壁を前にして立ち、両手を壁につき、ひじをまっすぐ伸ばしてゆっくり腰を前に突き出してください。これを1日に5~6回やるだけでもズレが大分改善されます」