元警察官より元自衛官の方が使える
坪山さんが自分を別班だったと言ったことはないは、映画『KT』について聞くと、「自分が一緒に拉致していることになっているが、あれは事実とは違う」と話していた。当時、拉致を計画していた韓国中央情報部(KCIA)は、日本に滞在していた金大中氏の所在が掴めなかった。そこでKCIAの工作チームは旧知の元自衛官坪山氏に調査を依頼。調査員らによって所在が判明した金大中氏を、工作チームが拉致。坪山氏は拉致目的とは知らず会社として仕事を請けただけだが、現役時代、陸上自衛隊の情報部門「陸上幕僚監部第2部」の特殊チームに所属していたことから、元自衛官が事件に関与かと騒がれた。
『VIVANT』と類似しているのは、金大中の所在を探す際、坪山氏が警視庁公安部の捜査員に協力を求めたという点だろう。警視庁公安部は坪山氏からの情報により、早くからこの事件の真相を掴んでいたという。ここら辺の詳細は、様々な著作やネットで調べれば色々出てくる。
当の坪山氏は、存在感のある佐藤浩市さんとは似ても似つかないタイプである。別班メンバーと判明した新庄浩太郎役の竜星涼さんのように、スラリとしたイケメンでもない。イケメンは人込みでも目立ち、尾行や張込みには向かないが、坪山氏は小柄で目立たず、顔つきはしっかりしてまじめそうな風貌ながら個性がない。趣味の山登りで健康そうに日焼けした、気さくな感じのどこにでもいるオジサンにしか見えず、いとも簡単に雑踏に紛れてしまうタイプだ。。だが、仕事の話になると目つきが変わり、底知れぬ暗い色の目になった。
情報収集については元自衛隊で調査隊に所属し、防諜や諜報活動は陸上自衛隊の学校で学んだと聞いた。その学校は、スパイ養成学校として知られた陸軍中野学校の流れを汲むものだ。それだけに調査の腕は一流で、インテリジェンス関係者からの信頼は厚かった。坪山氏の調査会社で働く調査員には他にも自衛隊出身者がいた。。その理由を彼は「元警察官より元自衛官の方が使えるから」と話した。
「警察官は尾行が見つかっても警察手帳を見せれば、それで済む。だが自衛官には手帳がない。自分たちの力でどうにかしなければならない」。警察手帳は警察官にとって水戸黄門の印籠のようなものだが、自衛官が頼るべきは自分の力しかないというのだ。その調査員らもまた別班のメンバーだったかは不明だ。
元防衛大臣の石破茂議員は15日に公開されたCS放送TBS NEWSの『国会トークフロントライン』で別班について、「あるいともないとも言えませんがね」とコメントし、「ただ、そういうものはあるべきでしょう。国家のために」と付け加えた。中国に北朝鮮、ロシアの動静を注視しなければならない我が国には、石破議員の言う通り、そういうものがあるべきだ。