この秋のテレビ番組の改編で、フジテレビの新番組に顕著な傾向が見られるという。それはテレビ界で長らく番組の”人気度”をはかる指標として重視されてきた「世帯視聴率」からの脱却だ。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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秋の改変期が間近に迫り、民放各局がそれぞれ終了させる番組、新たにスタートする番組、放送時間を移動させる番組を発表しています。
今秋の動きで最も目を引くのはフジテレビの改編。『潜在能力テスト』『林修のニッポンドリル』『TOKIOカケル』『VS魂』『爆買い☆スター恩返し』を終了させ、新たに『木7◎×部』(木曜19時台)と『オドオド×ハラハラ』(木曜20時台)をスタートし、『突然ですが占ってもいいですか?』を初のゴールデンタイムに昇格(月曜23時台→火曜20時台)などの動きが見られました。
さらに、金曜21時台にドラマ枠を54年ぶりに復活させ、第1弾として『うちの弁護士は手がかかる』を放送。「やっぱり、楽しくなければフジテレビじゃない」という改編のキャッチフレーズも含め、大きく変えようとしている様子が伝わってきます。
これらの大幅な改編から読み取れるのは、2010年代に「テレビがつまらなくなった元凶」とまで言われ問題視された世帯視聴率の一掃。今秋の改編で動く番組にはどんな意味があるのでしょうか。
手堅いコンセプトの番組が次々に終了
まず前述したフジテレビの番組にふれていきましょう。
終了する『潜在能力テスト』『林修のニッポンドリル』『TOKIOカケル』『VS魂』『爆買い☆スター恩返し』の共通点は、中高年層から支持を集めやすいコンセプトであること。難易度が低めのクイズ番組『潜在能力テスト』、「林先生の授業」という形式の教養バラエティ『林修のニッポンドリル』、アラフィフ3人によるトークバラエティ『TOKIOカケル』、前番組の『VS嵐』から通算15年半放送されてきたゲームバラエティ『VS魂』、買い物と旅をフィーチャーした人情バラエティ『爆買い☆スター恩返し』は、それぞれ中高年層が好むコンセプトで世帯視聴率を手堅く狙うタイプの番組でした。
一方、新番組の『木7◎×部』は「芸能人が学校にはない“部活”に挑む」、『オドオド×ハラハラ』は「オードリーとハライチを佐久間宣行が演出する」というターゲット層が低めのコンセプト。初のゴールデン昇格を果たす『突然ですが占ってもいいですか?』も同様であり、現在民放各局がターゲットに据える「コア層(主に13~49歳)の個人視聴率狙い」という姿勢がうかがえます。
あらためて説明すると、世帯視聴率は「どれくらいの世帯で番組を見ていたか」、個人視聴率は「4歳以上の家族で、誰がどれくらい番組を見ていたか」を示す数値。個人視聴率は性別・年齢・職業などに分けた数値が出せる一方、世帯のみが基準の世帯視聴率が「いかにざっくりとした数値であるか」が分かるのではないでしょうか。
また、それ以上に世帯視聴率が問題視されていたのは、「少子高齢化が進む日本では中高年層向けの番組を作ったほうが数値は上がりやすく、多くのスポンサー企業が求める消費行動の活発なコア層向けの番組とはかけ離れてしまう」こと。スポンサー企業としては、どんな人が何人見ているか分からない上に、中高年層に受ける番組のほうが数値は上がる世帯視聴率を指標として使う必然性はなく、ほぼ取引の現場では使われなくなっていました。