【政治部記者覆面座談会・第4回】「内閣改造をするほど総理の権力は下がる」とは、「人事の佐藤」と呼ばれた佐藤栄作・元首相の言葉だが、今回の内閣改造・自民党役員人事はまさにその通りの結果となった。
混迷する岸田政権にいったい何が起きているのか。そこで本誌・週刊ポストは官邸詰めや自民党担当の政治部記者4人による緊急覆面座談会を開催し、改造の舞台裏を辿った。参加者はキャップクラスのベテラン記者A氏とB氏、取材の第一線に立つ若手・中堅のC氏とD氏だ。
記者C:今回の改造にあたって、岸田総理は茂木敏充・幹事長に相当怒ってました。インド訪問中に読売が〈岸田首相が「茂木幹事長続投」で調整〉(9月7日付)と報じると、「オレは誰にもそんなことは言ってない」とすごい剣幕だったとか。あの記事は明らかに茂木氏サイドのリークで、「麻生氏も続投を首相に進言していた」と書かれているのがミソ。茂木氏は“麻生(太郎・副総裁)さんの言うことを聞かなくていいのか”と総理を牽制したのでしょう。
記者A:岸田総理は後見人の麻生さんの意向を無視できないというのはその通りだろう。
記者C:だから総理は記者には読売報道を全面否定しないで「(茂木続投は)条件付きだ」と言っていたが、インドから帰国すると真っ先に萩生田光一・政調会長を公邸に呼んだ。いわゆる萩生田官房長官構想ですが、その狙いは官房長官交代をテコに茂木幹事長も交代させるぞという逆襲でした。
記者A:それも麻生さんから、「萩生田を官房長官に起用したら旧統一教会問題で政権はもたなくなる」と忠告されてポシャった。
記者D:結局、麻生さんの言いなりですよね。
記者A:麻生さんは茂木氏に幹事長留任のかわりに来年の総裁選は出馬しないと約束させた。岸田総理もそれで手を打った。
記者C:しかし茂木氏は今年68歳で、来年の総裁選がラストチャンスと見られているから、党内には「茂木さんは総裁選をあきらめたのか」という声があがっています。
記者A:あきらめてはいないよ。茂木氏は総裁選まで岸田総理に解散・総選挙をさせないで、菅義偉・前首相のように支持率低下で総裁選に出られなくなる状況をつくりたい。そうなれば自分に出番が回ってくる。これまで以上に総理の足を引っぱりにかかるつもりだろう。
記者B:岸田さんも茂木氏の魂胆は見抜いている。だから同じ茂木派の小渕優子氏を党4役の選対委員長に起用して牽制させ、木原誠二・前官房副長官を党執行部の一端、幹事長代理兼政調会長特別補佐氏に送り込んだ。いわば小渕氏はデコイ(おとり)で、総理の茂木幹事長に対する“刺客”の本命は木原氏だとみていい。
記者D:ドロドロの戦いが始まりそうですね。
(第5回につづく。第1回から読む)
※週刊ポスト2023年10月6・13日号