芸歴50年超の漫才師・西川のりお(72)。約40年前、「西川のりお・上方よしお」のコンビで漫才ブームの一翼を担った頃から変わらない舌鋒鋭い時事漫談で、いまも舞台に立ち続けている。彼が今、“毒舌”を吐く対象とは──。(前後編の前編)
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「こんにちは、林真理子です」「おい、ちゃうやろ!」
西川のりお・上方よしおのコンビが舞台に登場すると、のりお師匠はいつものように開口一番、自己紹介を間違える。これまで、何人の名前を言ってきたであろうか。旬の人(旬の事件の人)をチョイスするわけだから、名前を呼ばれるのはむしろ光栄かもしれない。
取材日は8月11日。日大アメフト部員の覚醒剤・大麻所持をめぐる記者会見の3日後だけに、旬の話題を揶揄した登場だ。夏休みで親子連れも多く、子供も大人に釣られて笑う。劇場にはこの日も楽しい雰囲気が充満していた。出番を終えるとすぐに取材開始。西川のりおは舞台から、我々取材班は客席から、楽屋へ急いだ。
「さぁ、なに話しまひょ」
席に着くと、息ひとつ切らせてない。
「そう、よう聞いてくれました。最近、ようやく肩の力が抜けてきましてね。楽屋のしゃべりを滑走路に、スーッと舞台に出て、スーッと着陸しますわ」
手のひらのジェスチャーは、飛行機を表している。
「だからね、汗ひとつかきませんねん。最近のお笑いはどこか力んでますでしょ。手がグーになってるねん。がんばるぞ、笑わせるぞ、勝つぞ、とかね。そんなんやったらちっとも笑えへんですよ。やっぱりね、手がパーでないと。そう思いませんか、ワハハッハハ」
西川は最近、YouTubeを始めた。政治談義が主で大阪市民の目から見た世事をスパスパと斬っていく。のりお・よしおはずっと何十年も時事漫才。最近あったあの事件のこと、「それでよろしいんかいね」「アホちゃうか」というしゃべくりを舞台で長年やってきた。そのままの勢いでしゃべくり倒しているのだった。